クマスプレー(ベアスプレー)に含まれる成分は基本的に 「唐辛子由来の強力な刺激成分」と、それを噴射するための溶剤・噴射ガス」 の組み合わせです。
市販品は法的基準・安全基準に基づいて厳密に調整されており、一般的な防犯スプレーとは構造・威力がまったく違います。以下で詳しく解説します。
◆ 1. 主成分:カプサイシン類(Oleoresin Capsicum = OC)
クマスプレーの核心成分は Oleoresin Capsicum(OC)=唐辛子から抽出した辛味エキス です。
● カプサイシン類とは?
OCは複数の辛味成分の混合物で、主に以下の成分が含まれています:
- カプサイシン (Capsaicin)
- ジヒドロカプサイシン (Dihydrocapsaicin)
- ノルジヒドロカプサイシン
- ホモカプサイシン
- ホモジヒドロカプサイシン
これらを総称して カプサイシノイド と呼びます。
● 含有濃度
クマスプレーのOC濃度は
約1〜2%(カプサイシノイド換算で2%前後)
が一般的。
この濃度は市販の防犯スプレーより強力で、「クマを一時的に撃退する」ことを目的に最適化されています。
※人間用の催涙スプレーとは濃度も噴射量も桁違いです。
● 生物学的な作用
カプサイシノイドはクマの
- 鼻腔粘膜
- 目
- 呼吸器
に強烈な刺激を与え、以下の症状を引き起こします: - 激しい痛み
- 涙と鼻水の分泌
- 視界喪失(白濁して見えなくなる)
- 呼吸の一時的な困難
これによりクマの突進を止め、逃げさせることが目的。
◆ 2. 溶剤(キャリア液)
OCを均一に分散させ、噴射しやすい霧状にするために使用されます。
代表例:
- エタノール(アルコール)
- 植物油やグリコール類(商品による)
- 界面活性剤(OCの分散を安定させる)
これらはOCを溶かす役割と、噴射パターンの安定性の向上に関わります。
◆ 3. 噴射ガス(推進剤)
OCを10m前後の距離まで霧状で噴射するために使用されるガス。
代表例:
- 二酸化炭素(CO₂)
- 窒素(N₂)
- 加圧された液化ガス
高圧ガスゆえ、缶の構造設計や安全弁が重要。
クマスプレーの缶はとても高圧で、普通のスプレー缶よりはるかに頑丈に作られています。
◆ 4. 噴射パターンを作る添加成分
クマスプレーは 霧状(フォッグパターン) に広く広がるよう設計されており、以下の要素が関係しています。
- 霧化を助ける成分
- 粘度調整剤
- ノズル形状に合わせた噴霧補助剤
これにより、
広く・均一に・長距離に飛ぶ霧
が作られます。
◆ 5. 着色剤(商品によっては)
クマが噴射後にどの方向へ逃げたか確認できるよう、微量の着色成分が入る場合があります(必須ではない)。
◆ 6. 各成分の役割まとめ
| 成分 | 役割 |
|---|---|
| カプサイシノイド(OC) | クマに強烈な刺激を与えて撃退 |
| 溶剤 | OCを均一に溶かす・霧化を助ける |
| 噴射ガス(CO₂/N₂など) | 10m級の噴射を実現 |
| 霧化補助成分 | 噴射の広がりと安定性を向上 |
| 着色剤(任意) | 使用後の確認用 |
◆ 7. クマスプレーの成分による安全性
クマスプレーは“さっ傷”を目的としません。
- クマをしなせない
- 怒らせずに撃退する
- 人への後遺症も少ない(ただし非常に痛い)
という理念で作られています。
ただし人間に使うと
- 激しい痛み
- 一時的な視界喪失
- 呼吸困難
を引き起こすため、危険物として扱われます。
◆ まとめ
クマスプレーの主成分は以下の通り:
- 唐辛子由来のOC(1〜2%)
- 溶剤(アルコール等)
- 噴射ガス(CO₂/窒素など)
- 霧化調節成分
- (製品によって)着色剤
これらを高圧で噴射し、クマを一時的に無力化して逃げる時間を確保するための装備です。


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