日本で「個人がクマを駆除してよいか」について、法律・例外・実務・罰則・現実的なリスクを体系的に詳しく解説します。
■ 結論:個人がクマを勝手に駆除することはほぼ不可能(違法)
まず最重要ポイント:
◆ 個人が許可なくクマをころす → 違法(鳥獣保護管理法違反)
日本のクマ(ツキノワグマ/ヒグマ)は、
鳥獣保護管理法(正式名称:鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律) により保護されています。
よって、
「許可なしで個人がクマをころす」
「撃つ・罠にかける・毒餌を置く」
これらはすべて違法で、罰則の対象になります。
■ 法律上、クマを駆除できるのは以下のみ
◆(1)自治体の許可を受けた「有害鳥獣捕獲」
- 市町村長が「人身被害の恐れ」や「農業被害」を認めた場合
- 捕獲許可証が発行された猟友会員などのみが実施
※一般人はできません。
◆(2)狩猟期間中の猟師(免許所持者)
ただし:
- 狩猟免許(第一種銃猟 or わな猟)
- クマが「狩猟可能区域」であること
- クマが「狩猟鳥獣に指定されている地域」であること(都道府県による)
- 「狩猟期間中のみ」
→ これら全てを満たさない限り、クマは狩れません。
多くの都県では「クマは狩猟対象外」になっているため、そもそも撃てません。
■ ◆(3)例外:正当防衛でクマをころした場合(超限定)
法律上、**正当防衛(刑法36条)**は認められます。
つまり、
- 突然襲われて、
- 逃げられず、
- 命の危険が迫っており、
- 他に回避手段がなく、
- やむを得ず攻撃した結果クマが死ぬ
このような状況では違法ではありません。
しかし実際には以下の理由でほぼ成立しません:
●(1)武器を持っている民間人が極めて少ない
銃を持っていなければ反撃そのものが困難。
●(2)「本当にやむを得なかったか」が厳しく調査される
当局は
- 逃げる余地は?
- 挑発していないか?
- 武器の携行が正当か?
など極めて厳しく判断します。
●(3)過去にも「正当防衛でクマをころした事例」はほとんどない
多くは「事故」とされるか、クマが逃げて終わるケースがほとんどです。
■ 個人が勝手に駆除したらどうなる?(罰則)
● 鳥獣保護管理法違反
1年以下の懲役または100万円以下の罰金
(状況によってはさらに加算)
● 銃を使った場合の追加リスク
- 銃刀法違反
- 発砲許可の問題
- 銃の没収、免許取り消し
● 罠を勝手に仕掛けた場合
- 許可のない狩猟行為
- 最大3年以下の懲役または300万円以下の罰金もあり得る
● 毒餌等を使った場合
- 動物虐待の扱い
- 不法投棄の扱い
違反の幅が広く、重罰になる可能性が高いです。
■ 「個人で駆除できない」現実的な理由(法律以外)
◆(1)危険すぎる
クマは体重100〜150kg、山では時速40kmで走ります。
銃を持った猟師でさえ、単独での対応は困難。
◆(2)麻酔銃は一般人は使えない
- 医師免許
- 獣医師
- 麻酔銃所持免許
- 射出器の所轄警察許可
→ ほぼ行政専門員しか使えません。
◆(3)クマは「見つけてもすぐにころしてよい動物」ではない
生態系保全・個体群管理が必要で、
個人判断では認められません。
■ 「個人ができる」現実的かつ合法な対策
以下は完全に合法:
●(1)クマを寄せつけない環境整備
- 生ゴミを屋外に置かない
- 収穫後の農作物を残さない
- 放任果樹の撤去
- コンポストの管理
●(2)作業時の音・クマ鈴
特に山林・農地での作業時。
●(3)電気柵(適切な設置が重要)
農作物を守る最も有効な方法。
●(4)遭遇したら通報し、自治体に任せる
- 市町村役場
- 地域の猟友会
- 警察(市街地の場合)
■ まとめ
◆ 個人がクマを勝手に駆除する → 違法
◆ 許可者のみが駆除できる
◆ 正当防衛でクマをころすのは極めて例外的
◆ 無許可駆除は重い罰則
◆ 個人ができるのは「追い払い」「予防対策」のみ


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