「猟友会(りょうゆうかい)」は、ニュースやクマ対策などで耳にすることが多い言葉ですが、
実際にどんな組織で、何をしているのかを正確に理解している人は少なくありません。
以下では、猟友会の成り立ち・役割・活動内容・課題まで、詳しく丁寧に解説します。
🏞 猟友会とは(概要)
猟友会(りょうゆうかい)とは、
日本各地の狩猟者(ハンター)で構成される公益的な団体のことです。
正式には多くの都道府県に「○○県猟友会」「○○市猟友会」といった組織があり、
全国的には「公益社団法人 大日本猟友会(略称:日猟)」がその連合体の中心に位置します。
🧭 つまり、猟友会=ハンター(有害鳥獣駆除などを行う人たち)の組織的な協会です。
🕰 猟友会の歴史
- 1934年(昭和9年):「大日本狩猟協会」として発足(国家主導の狩猟管理目的)
- 戦後(1952年):「大日本猟友会」として再発足
- 2013年:「公益社団法人 大日本猟友会」に移行(環境保全・地域貢献を明確化)
現在では、各都道府県猟友会を束ねる全国ネットワークとして存在しています。
全国の会員数はおよそ 8〜9万人(2020年代) とされています。
⚙️ 猟友会の主な役割・活動内容
① 有害鳥獣の駆除
- 最も知られている活動であり、クマ・イノシシ・シカ・サル・カラスなどの被害動物を捕獲・駆除します。
- 農林業被害を防ぐため、自治体や農家からの依頼に基づいて活動することが多いです。
- クマの場合は、出没や人身事故の防止のため、警察・自治体と連携して出動します。
🐻 クマ出没時、警察が「猟友会に出動を要請」と報道されるのはこのためです。
② 狩猟の安全指導・啓発
- 会員に対して、銃の安全管理・法令遵守・狩猟マナーの指導を行います。
- 新しく狩猟免許を取得した人への講習や、地元の子どもたちへの「自然と命の教育活動」も行うことがあります。
③ 野生動物の保護・管理
- 単に「殺す」だけでなく、**野生動物の数を適正に保つ(生態系バランスの維持)**ことも目的です。
- 近年は「野生動物保護と共存」の視点が重視され、
- 個体数調査
- モニタリング(カメラ設置など)
- 環境省や自治体との共同調査
といった科学的な管理活動にも協力しています。
④ 地域防災・緊急時支援
- 災害時に、山林や僻地での捜索活動を行うことがあります。
- 山間部の地理に詳しく、無線機や猟犬を扱える人材が多いため、警察や消防の支援を担うことも。
💼 猟友会の組織構造
- 全国組織:公益社団法人 大日本猟友会
↓ - 都道府県猟友会(例:宮城県猟友会)
↓ - 支部・地区猟友会(市町村単位)
各階層で会員が登録され、会費による自主運営が基本です。
ただし、有害駆除などの公的活動は自治体予算から委託料が支払われます。
🔫 会員になるには
猟友会の会員になるには、まず狩猟免許を取得する必要があります。
免許には次の4種類があります:
| 狩猟免許の種類 | 使用可能な道具 | 主な対象動物 |
|---|---|---|
| 第一種銃猟免許 | 散弾銃など | シカ・イノシシ・カモなど |
| 第二種銃猟免許 | 空気銃 | 小鳥・小型獣など |
| わな猟免許 | 罠(くくり罠・箱罠など) | シカ・イノシシ・クマなど |
| 網猟免許 | 網類 | 小鳥など |
免許取得後、地元猟友会に入会することで、
- 地域での活動情報の共有
- 有害駆除の要請連絡
- 狩猟技術の指導
を受けられるようになります。
💰 猟友会の収入・報酬
猟友会は営利団体ではありません。
主な資金源は次のとおりです:
| 収入源 | 内容 |
|---|---|
| 会費 | 会員が支払う年会費(数千〜数万円) |
| 委託料 | 自治体からの駆除依頼による報酬 |
| 補助金 | 環境省や都道府県の事業補助 |
| 行事収入 | 狩猟大会や講習会などの収益 |
ただし、有害駆除の報酬は1頭あたり数千円〜数万円程度とされ、
活動は**「半ばボランティア」**的な側面が強いのが現状です。
⚠️ 猟友会が直面する課題
① 高齢化と後継者不足
- 平均年齢は60歳以上。
- 若手ハンターが極端に少なく、今後の駆除活動の担い手が不足。
② 銃規制と免許維持の負担
- 銃所持のための法的手続き・更新・精神鑑定などが厳しく、参入ハードルが高い。
③ 危険な活動への低報酬
- クマ・イノシシ駆除など命の危険を伴う作業が多いのに、報酬が低い。
- 出動時の安全装備や保険制度の整備が課題。
④ 世論とのギャップ
- 「動物を殺す組織」という誤解を受けることがあり、活動の社会的理解が十分でない。
- 実際は「生態系管理」「農業被害防止」「人命保護」の側面が強い。
🌲 猟友会の今後の方向性
- 科学的な個体管理(モニタリング・データ化)
- ドローンや自動撮影カメラの導入
- 若手・女性ハンターの育成
- 共存を目指した「捕獲→管理→教育」型活動
今では「野生動物とどう共存するか」を重視する流れが強く、
猟友会も“捕獲だけでなく管理・教育の担い手”へと役割を広げつつあります。
✅ まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 猟友会(全国組織は公益社団法人 大日本猟友会) |
| 性格 | 狩猟者による公益的団体 |
| 主な活動 | 有害鳥獣駆除・狩猟安全指導・野生動物管理 |
| 関係先 | 自治体・警察・環境省・農業団体 |
| 出動例 | クマ・イノシシ・シカ・サル・カラス等 |
| 現状の課題 | 高齢化・低報酬・後継者不足・世論理解不足 |


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