ここでは 走行距離課税(Mileage-based Road User Charge, MBRUC) の仕組みと背景を中心に、概要を詳しく解説します。
1. 走行距離課税とは
- 自動車が走行した距離(km数)に応じて課税する仕組みです。
- 現在の日本では「燃料にかかるガソリン税・軽油引取税」が道路財源の中心ですが、電気自動車(EV)や燃費向上で燃料消費が減る=税収が減るという問題があります。
- そこで「燃料消費ではなく、道路利用そのものに課税」する方式として検討されているのが走行距離課税です。
2. 課税の方法(例)
走行距離をどのように把握するかが制度設計のポイントです。
- 車検時のメーター読み取り方式
→ 年間走行距離を車検の際にチェックして課税。低コストだが年単位でしか把握できない。 - 車載機器(OBD端子利用)での自動計測方式
→ 走行中の距離を記録。比較的正確で、課税処理を自動化できる。 - GPS利用方式
→ 単なる距離だけでなく「どこを走ったか」まで把握可能。都市部のみ課税、渋滞課金などへの応用が可能だが、プライバシー懸念が大きい。
3. 背景と導入の理由
- 税収確保の問題
- 日本のガソリン税収は減少傾向。
- EV普及が進めば、ガソリン税依存の仕組みでは道路整備や維持に必要な財源が不足する。
- 公平性の確保
- EVは道路を走ってもガソリン税をほとんど払っていない。
- 走行距離課税なら「道路を使った人が使った分だけ払う」ことになる。
- 交通政策の柔軟化
- 都市部渋滞のピーク時に税率を高くする「ロードプライシング」へ応用できる。
4. 海外での動向
- アメリカ:オレゴン州などでパイロットプログラム(距離課税制度)を導入済み。
- ニュージーランド:ディーゼル車を対象に走行距離課税制度を実施。
- 欧州:一部の国で商用車・トラックに対して距離課金制度を導入済み。
5. 課題
- 技術的コスト:距離計測システムの導入・維持にコストがかかる。
- プライバシー:GPS利用型では「いつどこを走ったか」が記録される懸念。
- 地域格差:地方のように車依存度が高い地域は負担が増える可能性。
- 制度移行:既存のガソリン税や自動車関連税との二重課税をどう回避するか。
まとめ
走行距離課税とは、
- 燃料消費ではなく「道路利用距離」に課税する仕組み
- EV時代でも安定的に公平な財源を確保できる
- ただし導入コスト・プライバシー・地域格差が大きな課題
という特徴を持っています。
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