「スマホの利用は1日○時間までが良い」という言い方をよく見ますが、実は 「スマホ利用は1日2時間以内が医学的に適切」という明確なエビデンスは存在しません。
ただし、いくつかの研究から「長時間利用が心身に悪影響を与える可能性がある」という傾向が報告されており、それをもとに目安として“2時間”などの数字が言われるようになっています。以下で詳しく解説します。
1. 「2時間ルール」の由来
- 主に 子どものスクリーンタイムに関する国際的なガイドラインからきています。
- 世界保健機関(WHO, 2019)は、2〜4歳の幼児に対し 1時間未満 のスクリーンタイムを推奨。
- 米国小児科学会(AAP, 2016)は、 2〜5歳は1時間まで、それ以上の年齢では「健全な生活習慣を妨げない範囲で」と述べています。
- 一方で、思春期〜成人に対して「1日2時間以内」とする科学的な強制ルールは存在せず、「睡眠・学業・運動を妨げない程度に」という表現が一般的です。
- つまり “2時間”は絶対的な医学的限界値ではなく、健康習慣の目安としての便宜的な数字です。
2. 科学研究から分かっていること
(1) 心理的影響
- 2019年のオックスフォード大学の大規模研究(約35万人対象)では、
SNSやスクリーン使用時間と幸福感・精神健康の関連は非常に弱いことが示されました。
→ 「長時間利用が必ず有害」という強い証拠はない。 - 一方、カナダや韓国の調査では、
1日3時間以上の利用で睡眠障害・うつ症状のリスクが上昇する傾向が報告されています。
(2) 身体的影響
- 長時間利用は 姿勢の悪化(ストレートネック、肩こり、腰痛) を引き起こす。
- 夜間の使用は ブルーライトによる入眠障害や睡眠の質低下 と関連。
- ただしこれも「2時間」を境に急に悪影響が出るわけではなく、連続利用や就寝前利用が問題とされています。
(3) 子ども・思春期の学習への影響
- 2時間を超える長時間使用は 学業成績の低下や注意力低下 と関連する報告が複数あります。
- ただし「利用の仕方(SNS中心か、学習利用か)」によって影響は大きく異なることも分かっています。
3. では「2時間」の根拠は?
- 厳密な医学的・生理学的限界ではなく、
① 幼児へのガイドライン(1〜2時間未満)
② 子どもや若者で「2時間を超えると悪影響の傾向が見え始める」研究結果
→ これらを組み合わせて「とりあえず2時間を目安に」と言われるようになったものです。
4. 最新の推奨の考え方
現在の専門家の合意は、
- 「時間だけで制限するよりも、睡眠・学習・運動・人間関係などを妨げない範囲で使うこと」が重要
- 「利用時間よりも、**利用の質(学習・創造的活動か、受動的なSNS消費か)**を重視する」
という方向にシフトしています。
まとめ
- 「スマホ利用は1日2時間以内が医学的に正しい」という強固なエビデンスは存在しない。
- 2時間という数字は「子どもの健康を守るためのガイドライン」や「長時間利用で悪影響の傾向が見える研究」から導かれた 便宜的な目安。
- 本当に重要なのは 利用時間そのものよりも「使い方」「生活全体とのバランス」。
コメント