動物園が「かなり暑くなる」理由は、人と動物の両方にとって大きな課題となります。特に夏季には、動物の健康・来園者の安全・展示環境の維持という複数の観点から暑さへの対応が求められています。
ここでは、動物園が暑くなる原因と、それに対する動物・人間・施設それぞれの対策を詳しく解説します。
■ 動物園がかなり暑くなる主な原因
1. 屋外型施設が多く直射日光の影響を受けやすい
- 多くの動物園は広い屋外空間に動物を展示しており、直射日光が園内全体に当たる。
- コンクリートや舗装された通路も多く、照り返し・蓄熱によって**地表温度が非常に高くなる(50〜60℃以上)**ことも。
2. 動物の飼育環境が「自然風任せ」になりやすい
- 一部の動物(ライオン、ゾウなど)は広大な展示場を必要とし、冷房や送風機が設置しにくい。
- 風通しが悪い場所では熱がこもってしまう。
3. 動物の種類によって暑さに弱い種がいる
- 北極圏や寒冷地出身の動物(シロクマ、アムールトラ、レッサーパンダなど)は、高温に非常に弱い。
- 一方で、熱帯・砂漠出身の動物でも湿度には弱いことが多い(例:ミーアキャット、カピバラ)。
4. 来園者の滞在時間が長く、密集しやすい
- 夏休みなどは子ども連れの来園者で混雑しやすく、屋外での待機時間や移動中に熱中症リスクが上昇。
- 建物や通路の日よけ・日陰が不足している施設も多い。
5. 給排水・冷却設備の限界
- 大規模な水使用(プール・打ち水・ミスト)のための設備が限られ、一時的な冷却に依存する場面も多い。
■ 動物園における暑さ対策(動物・人・施設)
【A. 動物向けの暑さ対策】
対策項目 | 内容 |
---|---|
冷房・冷風扇 | 屋内展示室や寝室にエアコンや大型ファンを設置 |
ミストシャワー | 動物の運動場や柵に霧状の水を散布し体温を下げる |
氷や冷却餌の提供 | シロクマ・レッサーパンダなどに氷や冷凍フルーツを与える |
プールや水浴び場 | ゾウ・カバ・サルなどに水遊び可能な施設を提供 |
日陰の確保 | 木陰・人工屋根・岩陰など、直射日光を避けられる環境を整備 |
活動時間の調整 | 朝夕に動物を外に出すなど、暑い時間帯の行動を制限 |
【B. 来園者(人)向けの暑さ対策】
対策項目 | 内容 |
---|---|
日陰のベンチ・通路の設置 | 散策ルートにシェードや屋根付きの休憩所を増設 |
ミストゲート・水場の設置 | 園内にミストシャワーや足水スポットを設置 |
自販機・給水所の増設 | 熱中症防止のために冷水がすぐ飲める設備を充実 |
熱中症警戒サイン | 「気温●度以上で注意」などの気象連動型表示を園内に設置 |
室内展示エリアの案内強化 | 空調のある建物への誘導で来園者の滞在温度をコントロール |
【C. 園の構造・環境改善】
● 遮熱舗装・保水性舗装の導入
- 歩道や広場の路面に熱を吸収しにくい舗装を用いることで地表温度を低減。
● 緑化・日陰の拡充
- 園路・広場・展示エリアの植栽による木陰・蒸散冷却効果を最大限活用。
● 自然風を活かすレイアウト
- 園内の風通しを妨げない配置(建物や塀の間隔など)を意識した設計。
■ 暑さ対策の先進的な取り組み事例(日本)
● 上野動物園(東京都)
- 夏季は「氷プレゼントタイム」「ミストシャワーゾーン」を設置。
- シロクマには専用プールと氷入りの餌を提供。
● 旭山動物園(北海道)
- 高温時は展示を中止し、動物の健康最優先の展示運営を実施。
- 給水場・日陰スペースを園内各所に配置。
● 神戸どうぶつ王国
- 全天候型の室内展示が多く、冷房完備で人と動物の快適性を両立。
■ まとめ:動物園の暑さの原因と対策
分類 | 内容 |
---|---|
暑さの原因 | 直射日光、舗装の照り返し、風の遮断、動物の体温調整の限界 |
動物向け対策 | 氷・ミスト・プール・冷房・日陰の確保・時間調整 |
人間向け対策 | 給水、ミスト、日陰、空調建物の案内、熱中症対策表示 |
構造対策 | 遮熱舗装、緑化、園路の風通し設計 |
課題 | 動物の個体差と種差対応、エネルギーコスト、来園者ニーズの両立 |
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