「非弁行為(ひべんこうい)」と「退職代行」は、実際に日本で大きな議論になってきたテーマです。
結論から言うと――
⚖️ 退職代行サービスの中には、非弁行為に該当する可能性があるものが存在します。
つまり、運営主体が弁護士かどうかで、合法か違法かが明確に分かれます。
以下で、法律的な仕組み・具体例・グレーゾーン・注意点まで詳しく解説します。
🧾 1. 非弁行為とは(おさらい)
まず前提として、「非弁行為」は次のように定義されます。
弁護士でない者が、報酬を得る目的で、他人のために法律事務を行うこと(弁護士法第72条)
つまり、退職の場面でいえば:
- 退職の意思を本人に代わって伝える
- 有給消化や未払い賃金の交渉を行う
- トラブル解決のために相手と交渉する
これらを弁護士でない人が有償で行うと、非弁行為に該当する可能性があります。
💼 2. 退職代行とは
退職代行サービスとは、依頼者(労働者)に代わって会社に「退職の意思」を伝えるサービス。
2018年頃から急速に広まり、現在は「弁護士系」「民間系」「労働組合系」の3タイプに分かれます。
⚖️ 3. 退職代行の「3つのタイプ」と合法・違法の境界線
タイプ | 運営主体 | 法的地位 | 非弁行為のリスク | できること・できないこと |
---|---|---|---|---|
✅ 弁護士法人型 | 弁護士 | 合法(弁護士法に基づく) | なし | 退職通知・交渉・請求すべて可能 |
⚠️ 労働組合型 | 労働組合(ユニオン) | 合法(労働組合法第6条) | 低い | 組合員の代理として団体交渉が可能(賃金・退職条件など) |
❌ 民間業者型 | 一般企業・個人 | 資格なし | 高い | 「退職意思の伝達」しか合法ではない(交渉はNG) |
🧠 4. 非弁行為とされる具体例
❌ ケース1:民間業者が交渉した場合
「依頼者の代わりに有給を全部使わせてください」
「会社側と退職日の調整をします」
「未払い残業代も払ってもらえるように話しておきます」
これらは会社との交渉行為にあたるため、
弁護士資格がない民間業者が行うと 弁護士法第72条違反(非弁行為) に該当します。
❌ ケース2:退職後のトラブル解決を請け負う
「退職後に会社から損害賠償請求が来たら対応します」
→ 法的トラブルへの対応・代理は弁護士の専権事項。
非弁行為となる。
⚠️ ケース3:労働組合を名乗るが実体がない
一部の業者が「労働組合提携」を謳っていても、実際に組合活動をしていない場合がある。
→ 形式だけ組合を名乗っても、実質が伴わなければ非弁行為と見なされる可能性あり。
✅ 5. 合法とされる範囲(非弁行為にあたらないケース)
💬 「退職の意思を伝えるだけ」
- 退職届の提出を本人の代わりに行う
- 電話やメールで「退職します」と伝達する
これらは単なる事務連絡の代行であり、法律的交渉に該当しないため合法です。
(ただし、報酬を取る場合はトラブルのない範囲に限られます)
⚖️ 6. 弁護士・労働組合が行う退職代行はなぜ合法?
🧑⚖️ 弁護士の場合
弁護士は「法律事務の代理」が法律で認められているため、
- 有給や残業代の請求
- 損害賠償請求対応
- 退職日の調整
などを含む交渉もすべて合法。
🧑🏭 労働組合の場合
労働組合法第6条により、組合は「団体交渉権」を持つ。
そのため、組合員の労働条件・退職に関する交渉も認められる。
ただし、「組合員」でなければ対象外。
⚠️ 7. 非弁行為に該当した場合のリスク
- 弁護士法第77条3号により
→ 2年以下の懲役または300万円以下の罰金 - 行為者本人だけでなく、業者全体(法人)も処罰対象
- 依頼者(退職者)も被害者となる可能性
→ 交渉が無効になり、トラブルが悪化するケースもある
📉 8. 実際に問題となった事例
- 一般企業の退職代行業者が「会社との退職交渉を行った」として、弁護士会から警告。
- SNS上で「交渉までやります」と宣伝していた業者が、非弁行為の疑いで摘発。
- 「労働組合と提携」と言いながら実際には無関係だった業者が行政指導を受ける。
🧩 9. 利用者が注意すべきポイント
チェック項目 | 内容 |
---|---|
① 運営元は誰か | 弁護士法人または実在の労働組合か確認 |
② 交渉内容が含まれていないか | 「交渉します」「トラブルも対応」と書かれていれば危険 |
③ 契約書・利用規約を確認 | 退職の「意思伝達」以外を請け負っていないか |
④ 弁護士名の明示 | 弁護士監修ではなく「弁護士運営」かどうかに注意 |
⑤ 料金が不自然に安い/高い | 非弁行為業者ほど料金体系が不透明なことが多い |
🧭 10. まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
非弁行為とは | 弁護士以外が報酬目的で法律事務を行うこと |
退職代行との関係 | 交渉・請求を伴うと非弁行為になる |
合法なケース | 弁護士または労働組合による代行 |
違法なケース | 民間業者が交渉・請求を行う場合 |
罰則 | 2年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
注意点 | 「退職の意思伝達」だけなら合法だが、それ以上はアウト |
✅ 結論
「退職代行=すべて合法」ではありません。
弁護士または労働組合以外が“交渉”をすれば、それは非弁行為です。
つまり、安全に利用したいなら――
🔹 弁護士運営の退職代行 か
🔹 実在する労働組合の退職代行
を選ぶのが確実です。
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