「非弁行為(ひべんこうい)」とは、法律上 弁護士でない者が、報酬を得る目的で法律事務を行うこと を指します。日本では弁護士法によって厳しく禁止されており、刑事罰の対象にもなります。
以下で、定義・背景・具体例・罰則・注意点まで詳しく解説します。
🧾 1. 非弁行為の定義
法的根拠
弁護士法第72条
弁護士でない者は、報酬を得る目的で、訴訟事件、非訟事件、審査請求その他一般の法律事件に関して、
法律事務を取り扱い、またはこれらの周旋をしてはならない。
つまり――
- 「弁護士資格がない」人が
- 「報酬目的」で
- 「法律事務(契約書の作成、示談交渉、裁判対応など)」を
- 行うこと
👉 これが「非弁行為」です。
⚖️ 2. 何が「法律事務」にあたるのか
「法律事務」とは、法律の専門知識を用いて他人の権利・義務に影響を与える行為を指します。代表的なものを挙げると:
分類 | 具体例 |
---|---|
民事関係 | 契約書の作成・確認、債権回収の交渉、離婚・相続などの示談交渉 |
刑事関係 | 被疑者・被告人の弁護活動、捜査機関との交渉 |
行政関係 | 行政不服申立ての代理、行政処分への異議申し立ての代行 |
これらを有償で行うには、弁護士資格が必須です。
🚫 3. 非弁行為の典型例
以下のようなケースが、実際に非弁行為と認定されやすいです。
💰 ケース1:示談代行
交通事故や離婚トラブルなどで、資格のない者が
「あなたの代わりに相手と交渉して、示談金を取ります」
という行為をする。
→ 非弁行為。
交渉や和解は弁護士しか代理できません。
💰 ケース2:債権回収の代行業者
「未払い金を代わりに回収してあげます」
と請け負って手数料を取る。
→ これも非弁行為。
債権の交渉・法的請求は弁護士業務に該当します。
💰 ケース3:行政書士などの越権行為
行政書士は書類作成を業としますが、相手方と交渉することはできません。
例:離婚協議書の作成だけならOK
でも、「慰謝料をいくらにするか」交渉するとアウト。
💰 ケース4:SNS・ネット上でのトラブル代行
「SNSの誹謗中傷を削除します」「返金請求を代行します」
などを報酬付きで請け負うケース。
→ 法律事務に該当する場合、非弁行為。
⚠️ 4. 非弁行為の罰則
弁護士法第77条3号
弁護士法第72条に違反した者は、
2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処する。
つまり、刑事罰(前科)となります。
個人だけでなく、組織・業者・法人にも適用される場合があります。
🧩 5. 弁護士以外でもできる合法的な範囲
資格者の中でも、「法律事務」の一部だけを扱える職種があります。
資格 | できる範囲 | できない範囲 |
---|---|---|
行政書士 | 書類作成・相談 | 交渉・代理 |
司法書士 | 簡易裁判所の代理(140万円以下) | 高額訴訟の代理 |
社会保険労務士 | 労務関係の申請・相談 | 労働裁判の代理 |
税理士 | 税務代理・相談 | 訴訟行為 |
👉 これらの資格者でも、弁護士以外は「交渉」や「代理」は原則禁止です。
🧠 6. なぜ非弁行為が禁止されているのか
理由①:市民の権利保護
弁護士でない人が法律事務を扱うと、誤った判断や手続きで市民の不利益を招く危険があるため。
理由②:法秩序の維持
国家資格である弁護士制度を守ることで、法律の適正な運用を確保。
理由③:悪徳業者の防止
「債権回収」や「示談代行」などを口実に、高額な手数料を取る詐欺的ビジネスを防ぐため。
🧩 7. 実際に問題となった事例
- 交通事故示談代行業者:保険金請求を代行し、報酬を受け取って摘発。
- SNS誹謗中傷の削除代行:弁護士資格がない業者が投稿削除請求を行い、逮捕。
- 債権回収代行:弁護士でない探偵やコンサルタントが報酬を受け取り、非弁で検挙。
🧭 8. まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 弁護士でない者が、報酬目的で法律事務を行うこと |
根拠法 | 弁護士法第72条 |
罰則 | 2年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
代表例 | 示談代行、債権回収、離婚交渉の代理など |
禁止理由 | 市民保護と法秩序維持 |
注意点 | 行政書士・司法書士でも「交渉」は原則NG |
✅ まとめの一言
非弁行為は、「法律を扱う権限のない人が、他人のトラブルに報酬を伴って介入すること」。
一見親切なサービスに見えても、法的には重大な違法行為です。
トラブル解決を依頼する場合は、必ず 弁護士に相談する ことが安全です。
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