甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ)にはクマがいます。しかも、ここに生息しているのは**ツキノワグマ(本州のクマ)**で、ヒグマではありません。以下で、甲斐駒ヶ岳周辺におけるクマの実態・出没傾向・危険性について詳しく解説します。
■ 1. 生息しているのは「ツキノワグマ」
- 本州の南アルプス(甲斐駒ヶ岳・鳳凰三山・仙丈ヶ岳など)に生息するのは、**ツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus)**です。
- 北海道にしかヒグマ(Ursus arctos yesoensis)はいません。
- したがって、甲斐駒ヶ岳で見られるクマは体長100~150cm、体重50~120kg前後のツキノワグマです。
■ 2. 甲斐駒ヶ岳周辺での出没・生息状況
● 北杜市(山梨県側)では出没情報が増加傾向
- 山梨県北杜市(甲斐駒ヶ岳の山麓)によると、
「甲斐駒ヶ岳山麓でのツキノワグマ目撃情報が増えている」と公式に注意喚起が出ています(北杜市HP 2025年時点)。 - 特に、尾白川渓谷周辺や黒戸尾根登山道付近ではクマの痕跡(爪痕、糞、足跡など)が確認されています。
● 具体的な出没事例
- 2024年7月:北杜市白州町の甲斐駒ヶ岳広域農道で体長80cm前後のクマが道路を横断(TBS NEWS DIG報道)。
- 過去には2008年、黒戸尾根登山道で子グマを連れたツキノワグマが登山者を襲撃し、男性が重傷を負う事故も発生。
- 近年は登山客増加と食べ物の持ち込みによる「人慣れ」の懸念もあります。
■ 3. クマが多いとされる背景
● 理由①:甲斐駒ヶ岳は広大なブナ・ミズナラ帯
ツキノワグマはドングリ類や果実を主食とし、ブナ・ミズナラ林を好みます。
甲斐駒ヶ岳の中腹から山麓にはこうした豊かな広葉樹林が広がり、食糧が豊富です。
● 理由②:人間活動の増加と気候変動
- 登山者・観光客・キャンプ利用者の増加により、クマが人間のにおいや食べ物に慣れやすくなっています。
- ドングリの不作年(飢餓年)には、クマが山を降りて人里に出没しやすくなる傾向があります。
- 2020年代以降は山梨県全域でクマ目撃件数が過去最多水準に達しています。
■ 4. 危険性のレベル
● 登山者にとってのリスク
- 甲斐駒ヶ岳は人里に近いながらも深い森林地帯を通るため、遭遇の可能性はゼロではありません。
- 特に、黒戸尾根ルート・尾白川渓谷ルートは出没が多く、単独登山・早朝・夕方の行動はリスクが高いです。
● クマの行動特性
- ツキノワグマは基本的に臆病で人を避けますが、
- 子グマ連れ
- 餌を探しているとき
- 突然の遭遇
では攻撃的になります。
- 襲撃事例の多くが「至近距離での鉢合わせ」によるもので、予防が最重要です。
■ 5. 登山時の対策と心構え
対策 | 内容 |
---|---|
音を出す | クマ鈴・ラジオ・会話などで存在を知らせる。静かな登山は危険。 |
食べ物を外に放置しない | 弁当や残飯、包装紙のにおいも引き寄せます。 |
早朝・夕方の行動を避ける | クマの活動時間帯(夜明け・夕暮れ)を避ける。 |
単独行動を控える | グループで登山すれば音が出て遭遇率が減ります。 |
クマの痕跡を見たら引き返す | 糞・爪痕・掘り返し跡などは警戒サイン。 |
地元自治体・登山口の掲示を確認 | 北杜市・南アルプス市の出没情報を事前にチェック。 |
■ 6. まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
生息種 | ツキノワグマ(本州固有種)、ヒグマは生息しない |
出没傾向 | 甲斐駒ヶ岳山麓(特に北杜市白州町~尾白川)で増加傾向 |
過去の事故 | 黒戸尾根で登山者襲撃(2008年)、近年も目撃頻発 |
危険度 | 「中~やや高」:行動次第で遭遇回避は可能だが注意が必要 |
対策 | 鈴・会話・匂い管理・時間帯の工夫が重要 |
結論:
甲斐駒ヶ岳にはツキノワグマが確実に生息しており、
近年は出没頻度が高まっているため、登山時には**「いる前提での準備と行動」が不可欠です。
ヒグマほどの巨大さはありませんが、ツキノワグマでも遭遇すれば命に関わる危険**があります。
コメント