企業の情報漏洩がなくならない最大の理由は、「企業がセキュリティ対策をしていないから」だけではありません。
実際には、攻撃者の高度化、システムの複雑化、人間のミス、委託先、内部不正、古いシステム、コストとの兼ね合いなど、複数の原因が重なっています。
2026年のIPA「情報セキュリティ10大脅威」でも、組織向けの脅威として、ランサム攻撃、サプライチェーン・委託先への攻撃、AI利用に伴うリスク、脆弱性悪用、標的型攻撃、内部不正などが挙げられています。つまり、情報漏洩は単一の問題ではなく、企業活動そのものに組み込まれた複合的なリスクになっています。
1. そもそも「完全に漏洩を防ぐ」のが非常に難しい
企業は大量の個人情報を保有しています。
例えば、
氏名
住所
電話番号
メールアドレス
生年月日
購買履歴
契約情報
クレジットカード情報
銀行口座情報
マイナンバー
健康情報
ID・パスワード
顧客との問い合わせ履歴
などです。
しかも、それらを単独で保管しているわけではありません。
顧客 → 店舗 → 本社 → クラウド → 委託会社 → 決済会社 → 配送会社
というように、多数のシステムや企業を経由します。
つまり、企業が守らなければならない場所が非常に多いのです。
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2. 攻撃する側は「1か所の弱点」を探せばいい
ここが非常に重要です。
企業側は、
> 「システム全体を安全にする」
必要があります。
一方、攻撃者は、
> 「どこか1か所でも突破できればいい」
という立場です。
例えば、
古いVPN
更新されていないサーバー
弱いパスワード
フィッシング
従業員の端末
委託会社
クラウド設定
公開サーバー
管理者アカウント
など、どこか一つを突破されるだけでも侵入の足掛かりになります。
IPAも2026年の組織向け脅威として「システムの脆弱性を悪用した攻撃」を4位に挙げています。
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3. サイバー攻撃そのものが進化し続けている
企業が対策をすると、攻撃者も対策を突破する方法を考えます。
これは終わりのない「いたちごっこ」です。
例えば、
昔
単純なウイルス
↓
企業がウイルス対策ソフトを導入
その後
標的型攻撃
↓
企業がメール対策を強化
その後
認証情報を盗む攻撃
↓
多要素認証を導入
さらに
ゼロデイ脆弱性、サプライチェーン攻撃、AIを利用した攻撃
という具合に、攻撃方法が変化します。
IPAは2026年に、初めて「AIの利用をめぐるサイバーリスク」を組織向け10大脅威の3位に選出しています。AIが攻撃を容易にしたり、巧妙化させたりする可能性だけでなく、企業側のAI利用による意図しない情報漏洩も問題として挙げています。
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4. 「人間」がどうしてもミスをする
情報漏洩はハッキングだけではありません。
むしろ、
人間によるミス
も非常に重要です。
例えば、
宛先を間違えてメール送信
添付ファイルを間違える
誤って公開設定
USBメモリを紛失
ノートパソコンを紛失
書類を紛失
顧客情報を別の顧客に送る
パスワードを使い回す
フィッシングメールを開く
偽サイトにID・パスワードを入力する
などです。
これは、
> 「社員を全員完璧な人間にする」
ことが不可能である以上、完全になくすのは困難です。
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5. 「内部不正」は特に難しい
企業の情報を扱えるのは、外部の攻撃者だけではありません。
従業員や元従業員、委託先の人間
が情報を持ち出す可能性があります。
例えば、
顧客名簿をコピーする
USBに保存する
個人メールに送る
クラウドストレージにアップロードする
顧客情報を第三者に売る
退職前にデータを持ち出す
などです。
IPAでも「内部不正による情報漏えい等」は2026年の組織向け10大脅威の7位で、2016年から11年連続で選出されています。
つまり、10年以上問題になっているにもかかわらず消えていない脅威なのです。
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6. 「社員全員を監視する」わけにもいかない
内部不正を完全に防ごうと思えば、
> 誰が
いつ
どの情報を
何件見たのか
何をコピーしたのか
などを徹底的に監視する必要があります。
しかし、それには、
コスト
プライバシー
労務管理
システム負荷
利便性
などの問題があります。
例えば営業社員が顧客情報を大量に閲覧するのは、仕事上必要かもしれません。
つまり、
「必要な人には情報を使わせなければならない」
という企業活動そのものが、情報漏洩リスクを生みます。
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7. 便利にすればするほど、攻撃面も増える
企業はITを使わなければ仕事になりません。
例えば、
クラウド
スマートフォン
テレワーク
VPN
SaaS
オンライン決済
AI
API
IoT
ECサイト
顧客アプリ
などです。
これらは便利ですが、接続するシステムが増えます。
すると、
接続先が増える
↓
管理対象が増える
↓
設定ミスの可能性が増える
↓
脆弱性が存在する場所も増える
という構造になります。
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8. クラウドだから安全、とは限らない
「クラウドなら専門会社が管理しているから安心」と考えるのも危険です。
クラウドサービスそのものが安全でも、
企業側の設定ミス
があれば情報が公開されてしまう可能性があります。
例えば、
「本来社内限定のデータ」
↓
「インターネットからアクセス可能」
という設定になってしまうなどです。
したがって、
クラウドサービスの安全性
と
企業自身の利用設定の安全性
は別問題です。
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9. 古いシステムを簡単には捨てられない
これも企業の情報漏洩をなくせない大きな理由です。
大企業には、
何十年も使われている基幹システム
が存在することがあります。
例えば、
銀行
保険
通信
電力
製造
物流
医療
小売
などです。
「危険だから全部新しくしよう」
と言っても、
数億円~数十億円規模の費用
システム停止リスク
データ移行
人材不足
古いシステムを理解している人材の不足
などの問題があります。
そのため、
古いシステムを使い続けざるを得ない
企業もあります。
—
10. 「アップデートすればいい」も簡単ではない
脆弱性が発見されたら、
> 「すぐアップデートすればいい」
と思うでしょう。
しかし企業の場合、
アップデートによって業務システムが動かなくなる
可能性があります。
そのため、
調査
↓
テスト
↓
バックアップ
↓
社内承認
↓
メンテナンス時間確保
↓
アップデート
という手順が必要になります。
攻撃者からすれば、
「企業が対応するまでの時間」
が攻撃チャンスになります。
実際、Verizonの2025年DBIRでは、脆弱性悪用が前年より34%増加したと報告されています。
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11. 委託先があると「自社だけ頑張る」では足りない
これは現在かなり重要です。
企業は自社だけで仕事をしていません。
例えば、
企業
↓
IT会社
コールセンター
印刷会社
配送会社
決済会社
クラウド会社
マーケティング会社
データ分析会社
などに業務を委託しています。
すると、
自社のセキュリティが強くても、委託先が侵入される
可能性があります。
IPAは2026年の組織向け10大脅威で「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」を2位にしています。
Verizonの2025年DBIRでも、第三者が関与した漏洩の割合が前年から倍増し、30%になったと報告されています。
つまり、
企業単体ではなく「企業+取引先+委託先」という巨大なネットワーク全体を守らなければならない
時代になっています。
—
12. 攻撃者にとって企業データは「金になる」
これも根本的な理由です。
企業が大量の個人情報を保有しているということは、
攻撃者にとって価値のあるデータが大量に存在する
ということです。
盗まれた情報は、
詐欺
なりすまし
不正ログイン
不正決済
スパム
恐喝
ダークウェブでの売買
などに悪用される可能性があります。
つまり、
「盗む価値があるから盗まれる」
のです。
—
13. ランサムウェアは「情報を盗む+企業を止める」
最近特に深刻なのがランサムウェアです。
攻撃者が企業ネットワークに侵入し、
データを暗号化
するだけではなく、
データを盗み出して「公開するぞ」と脅迫する
ケースがあります。
つまり、
> システムを使えなくする
+
情報を盗む
+
情報公開を脅迫する
という複合攻撃です。
IPAの2026年版では、ランサム攻撃が組織向け1位で、11年連続11回目の選出となっています。
Verizonの2025年DBIRでも、ランサムウェアが分析された漏洩の44%に存在し、前年から37%増加したとされています。
—
14. AIによって攻撃がさらに変わる可能性がある
AIは企業にとって非常に便利ですが、同時に攻撃者にも利用されます。
例えば、
自然なフィッシングメールの作成
偽の問い合わせ
多言語化
ソーシャルエンジニアリング
マルウェア開発の補助
攻撃対象の情報収集
などです。
一方、企業側でも、
「社員が生成AIに顧客情報を入力してしまう」
という別の漏洩リスクがあります。
IPAが2026年にAIリスクを組織向け3位に初選出したのは、この両面の危険性を反映したものです。
—
15. セキュリティには「お金」がかかる
企業からすると、
セキュリティ対策は利益を直接生み出しにくい
という問題もあります。
例えば、
セキュリティ人材
最新サーバー
EDR
SOC
多要素認証
バックアップ
監視システム
脆弱性診断
ペネトレーションテスト
従業員教育
などには費用がかかります。
しかも、
> 「年間1億円かけた結果、何も起きませんでした」
というのが理想的な結果です。
経営者からすると、その効果を売上のように測るのが難しい。
そのため、
「どこまでお金をかけるのか」
という難しい経営判断になります。
—
16. セキュリティを強くしすぎると仕事が不便になる
ここも重要です。
例えば、
「パスワードを毎日変更してください」
「毎回多要素認証してください」
「USB禁止です」
「外部メール禁止です」
「クラウドへのアップロード禁止です」
とすれば、安全性は高まるかもしれません。
しかし、
仕事ができなくなります。
その結果、
「面倒だからルールを破る」
人が出る可能性があります。
つまり、
安全性と利便性のバランス
が必要です。
—
17. 「100%安全」は存在しない
ここが一番大事かもしれません。
セキュリティ対策は、
漏洩確率をゼロにするものではなく、リスクを下げるもの
と考えた方が現実的です。
例えば、
10個の防御策を導入しても、
11個目の突破方法が見つかる可能性があります。
そのため企業は、
侵入されない
だけでなく、
侵入されても被害を小さくする
という考え方も必要になります。
—
18. 情報漏洩は「ハッキング」だけではない
ここは非常に誤解されやすいところです。
情報漏洩には、
外部攻撃
不正アクセス
ランサムウェア
フィッシング
脆弱性攻撃
だけでなく、
人的ミス
誤送信
紛失
誤公開
内部不正
持ち出し
売却
不正コピー
管理ミス
アクセス権限設定ミス
クラウド設定ミス
廃棄ミス
などもあります。
だから、
「ファイアウォールを強くすれば情報漏洩がなくなる」
という問題ではありません。
—
19. 情報漏洩がなくならない本当の構造
全体を図にするとこうです。
企業が大量の個人情報を保有する
↓
ITシステムで情報を管理する
↓
便利にするため外部サービスと接続する
↓
委託先にも情報を渡す
↓
従業員が情報を扱う
↓
システムには脆弱性が存在する
↓
攻撃者が新しい攻撃方法を開発する
↓
人間がミスする
↓
内部不正も起きる
↓
どこか一つが突破される
↓
情報漏洩
という構造です。
だから、単純に「セキュリティ担当者がもっと頑張ればいい」という話ではありません。
—
20. では、企業はどうすればいいのか
完全になくすことは難しくても、被害を大きく減らすことはできます。
重要なのは、
① 多要素認証
ID・パスワードだけに依存しない。
② 最小権限
社員が必要以上の個人情報を見られないようにする。
③ 脆弱性管理
古いソフト・機器を放置しない。
④ EDRなどによる監視
侵入後の不審な動きを検知する。
⑤ バックアップ
ランサムウェアでデータを破壊されても復旧できるようにする。
⑥ 委託先管理
「自社だけ安全」ではなく、取引先まで確認する。
⑦ 従業員教育
フィッシングや誤送信などを減らす。
⑧ 内部不正対策
アクセスログや権限管理を適切に行う。
⑨ AI利用ルール
生成AIに顧客情報などを不用意に入力しない仕組みを作る。
⑩ 漏洩後の対応体制
万一侵入された場合に、早期発見・封じ込め・通知・復旧ができるようにする。
という多層的な対策が必要です。
—
21. 「情報漏洩がなくならない=企業が無能」というわけではない
もちろん、
明らかな管理不備による漏洩
まで擁護する必要はありません。
例えば、
パスワード管理が杜撰
古いシステムを長期間放置
不要なアクセス権限を放置
従業員教育をしていない
漏洩発覚後も適切に対応しない
などは、企業側の問題として厳しく問われるべきです。
一方で、最新の対策を講じている企業でも、
高度な攻撃や未知の脆弱性、委託先経由の攻撃などを完全にゼロにすることは困難
です。
実際、2026年のIPAの脅威ランキングでも、ランサム攻撃、サプライチェーン、脆弱性、内部不正など、異なる経路の脅威が同時に上位に並んでいます。
—
22. 個人情報を預ける側からするとどう考えるべきか
利用者としては、
「この企業は絶対に漏らさない」
と考えるより、
「漏れる可能性はゼロではない」
と考えておく方が現実的です。
だからこそ、
同じパスワードを使い回さない
重要アカウントは多要素認証
不要なサービスに個人情報を渡しすぎない
クレジットカード利用通知を設定
不審なメール・SMSを信用しない
漏洩通知が来たらパスワードを変更
漏れた情報に応じてカード停止などを行う
といった**「漏れた後の被害を最小化する対策」**も重要です。
—
結論
企業の情報漏洩がなくならない理由を一言で言えば、
> 企業が守るべき範囲が巨大化する一方で、攻撃者はその中の「たった一つの弱点」を見つければよく、さらに人間・委託先・古いシステム・新技術などのリスクまで存在するから
です。
特に現在は、
①ランサムウェア
②サプライチェーン・委託先
③AI
④システムの脆弱性
⑤標的型攻撃
⑥内部不正
が同時に存在しています。IPAの2026年版でも、これらが組織向けの主要な脅威として整理されています。
したがって今後も「情報漏洩を完全になくす」というより、侵入を防ぐ→早期発見する→情報を持ち出させない→被害を限定する→速やかに復旧するという多層防御が現実的な方向になります。
企業の情報漏洩が無くならないのは何故?対策してるの?【2026】
疑問

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