フォークリフト運転中にAirPods（＝耳を塞ぐワイヤレスイヤホン）を付けるのは原則として避けるべきです。法的に「全面的に禁止」と書かれているわけではないものの（国によって扱いは異なる）、作業場の安全確保の観点・事業者の義務・労災リスクの点で重大な問題になり得ます。以下、理由・根拠・現場での対応策を分かりやすくまとめます。

なぜダメ（＝主要な理由・根拠）

• 危険音が聞こえなくなる：フォークリフト作業では「他車の接近音」「警笛」「人の呼びかけ」など“音”による警告が非常に重要で、耳を塞ぐとそれらを聞き逃す危険が高まります。これが事故の主因になります。(厚生労働省)
• 事業者には安全対策義務がある：日本ではフォークリフト作業に関するガイドラインや労働安全衛生規則により、事業者は運転者の安全確保（走路の分離、誘導者配置、教育など）を義務づけられています。運転中に音が聞こえない状態を放置すれば事業者責任に問われる可能性があります。
• 規制・指導の国際的立場：米国のOSHAも「イヤホン使用を明示的に全面禁止する規定はないが、使用が作業上の危険を生むなら許容されない／事業者がハザードを評価し、必要な措置を取るべき」といった解釈で、原則的に現場の危険評価を優先する姿勢を示しています。現場単位での禁止措置が一般的です。
• 耳栓・ノイズ低減の“逆効果”リスク：騒音対策としての保護具（耳栓・防音ヘッドフォン等）は必要な場合がある一方で、周囲の警告音まで遮断すると逆に危険を招きます。作業場では「騒音対策」と「状況認知（警報の把握）」のバランスを取る必要があります。（職場の騒音管理基準などの指針も存在します）

実際にどう扱われているか（実務）

• 多くの企業・倉庫ではフォークリフト運転中のイヤホン／ヘッドホン使用を禁止する就業規則や現場ルールを設けています。安全ルール違反として注意・懲戒の対象になり得ます。事業者側は現場リスクの評価・運用ルール化を行う責務があります。

もし「どうしても音が必要」な場合の現実的な対策（推奨順）

1. 原則は車載スピーカーや現場スピーカーで音声を流す（ナビ・連絡は車両スピーカー経由）── 運転者の耳を塞がない。
2. 二者間通信や連絡は産業用インカム（業務用無線・ヘッドセット）を使う── バイク/車向けの民生機とは異なり、インカムは「周囲音認知」や「PTT（押しボタン通話）」など安全面を考慮した運用ができる。
3. 耳を塞がない骨伝導型デバイスを検討（ただし過信禁止）── 骨伝導でも音量や実装次第で周囲音の把握が阻害される可能性があるため、現場でのリスク評価必須。
4. どうしてもAirPods等を使う場合（原則非推奨）：
   • 事前に事業者の明確な許可を得る。
   • ANC（ノイズキャンセリング）は必ずオフにする。
   • 音量は「周囲のクラクション・人の声が確実に聞こえるレベル」に調整する（ただしこれでも危険が残る）。
   • 走行中の操作禁止・停車時のみ調整。
   • 企業はリスクアセスメントを行い、許可条件を文書化すること。
     とはいえ、現場の安全性を優先する観点から個人判断で使用するのは強く禁止すべきです。

事業者（管理者）向けチェックリスト（最低限）

• フォークリフト運転中イヤホン使用の許可／禁止の明文化。
• 現場ごとのリスクアセスメント実施（騒音レベル・視認性・歩行者動線など）
• 代替手段の導入（車載スピーカー、業務用インカム、誘導員の配置）
• 教育・周知（毎日の朝礼・安全教育での徹底）。
• ルール違反時の対応（注意・書面による指導・懲戒規定の整備）

運転者（現場作業者）向け簡潔ルール（実行しやすく）

• 基本：付けない。会社のルールを優先。
• 付ける許可が出ている特殊ケースでも：ANCはOFF、音量は非常に低く、片耳でも安全が確保されるとは限らないと理解する。
• 操作は必ず停止して行う。緊急時の音声を優先する設定に。
• 異常を感じたら即停止・点検・上司へ報告。

まとめ（短く）

• 結論：フォークリフト運転中にAirPodsを付けるのは原則NG。安全確保・事業者責任の観点から禁止するのが標準運用です。例外は厳格なリスク評価と管理のもとでのみ検討すべきです。(厚生労働省)