空手でクマに勝てる見込みはほぼゼロです。以下、なぜそう言えるのか・現実的に何が有効かを、根拠（公的機関や研究）をつけて詳しく説明します。

なぜ空手では勝てないのか（主な理由）

1. サイズと力の差が圧倒的
   クマは体重・筋力・爪・牙という点で人間をはるかに上回ります。これらは“打撃力”だけでなく致命的な切創や噛みつきをもたらします。公的な安全ガイドは「人が素手で抗戦してクマを安全に制圧すること」を前提にしていません。
2. 速度・機動力が高い
   クマは短距離で非常に速く接近でき、角度を変えたり斜面で体勢を崩しにくい。空手の間合いや攻撃を当てる余裕がほとんどありません。実戦経験に照らしても公的助言は“棒や石・スプレーなど道具を使う”ことを重視します。
3. 空手の技は“皮膚・脂肪・筋肉・毛皮”を貫通してダメージを与えるには非効率
   人間の打撃は人間や小動物相手には有効でも、厚い被毛・皮下脂肪や大きな体躯を持つクマを短時間で無力化するには到底足りません。したがって「空手で相手の戦意を喪失させる／止める」という想定は現実的ではありません。

種類による違い（対応が変わる）

• ツキノワグマ・黒熊（Black bear）：比較的小型の個体も多く、「捕食的でない」場面では反撃（顔面や鼻を狙うなど）が一定の効果を示す場合があるため、公的情報では“逃げられないときは抵抗することも選択肢”としています。だが「素手」一本で勝てるという意味ではありません。
• ヒグマ（グリズリー／ブラウンベア）：防御的攻撃（驚かせた・巣を守る母グマなど）が多く、こうした場合は“うつぶせで死んだふり（首・頭を守る）”を推奨するのが北米ガイドラインの基本です。素手で果敢に空手技を繰り出すような対応は推奨されていません。

「空手の技術」が全く無意味か？（現実的な評価）

• 空手で得られる反射神経・状況判断・冷静さは役立つ可能性があります（咄嗟にスプレーを使える等）。しかし、それは「勝つ」ための力ではなく「生き残るための冷静さ」です。
• 実際の攻撃場面では“距離を保つ・大きな音を出す・道具（棒や石）で威嚇・ベアスプレーを使う”が実効的手段であり、空手のみでクマを無力化できる可能性は理論上も実例上も極めて低いです。

科学的に有効とされる道具・行動（空手より効果あり）

1. ベアスプレー（唐辛子成分） — 研究と実データで最も効果が高いと示されています（使用で攻撃が止まる率はおおよそ90％前後の報告）。携行と使い方の練習が重要です。
2. 死んだふり（ヒグマ系の防御的攻撃に対して） — NPSなどはヒグマに対しては伏せて首を守ることを推奨しています。
3. 反撃（黒熊や“捕食的”な攻撃では） — 逃げられない場合は力のあるもの（棒・岩・ナイフ・スプレー）で顔面を狙って反撃するよう勧められます。だが素手での反撃は危険度が高い。

実務的なアドバイス（山・里でできる現実的対策）

• そもそも遭遇しない：鈴・音・グループ行動・食料管理で出会いを避ける。(北海道庁, 環境省)
• ベアスプレーを携行し、胸や腰のホルスターに常備して練習する（取り出しと噴射の練習）。
• 遭遇時は落ち着いて状況を判断：遠い・気づかれていないなら距離を取る。近距離での突発遭遇はすぐに防御行動（伏せる／スプレー）を取る。

まとめ（要点）

• 空手でクマに勝てる見込みはほぼゼロ。理由は体格・武装（爪・牙）・機動力の差。
• 種類や状況によっては「反撃が有効」とされる場面もあるが、そこでも素手ではなくベアスプレーや棒・石など“道具”を使うことが推奨される。
• 最も賢明なのは「遭遇を防ぐ」こと、そして「ベアスプレーを携行して使えるようにしておく」ことです。