クマは「下り坂でも速い」です。
「クマは下り坂が苦手で逃げ切れる」というのは迷信で、実際には平地と同じかそれに近いスピードで下れるし、場合によっては重力の助けで加速できます。
どうして下り坂でも速く走れるのか(身体・力学の観点)
- 足の構造:クマは人間と同様に足底を使う「扁平(plantigrade)歩行」で、足底の面積が広く接地するためブレーキやトラクション(地面を掴む力)を効かせやすい。これが急斜面でも安定して走れる理由の一つです
- 筋力と慣性:体格に比して非常に強い四肢の筋肉を持つため、重力に乗って加速する場面でも姿勢をコントロールして高速で下降できます。
- エネルギーと勾配の関係:研究(トレッドミル実験や野外GPS調査)では、上りはエネルギーコストが増すが、下り(下降)に関しては種や斜度で挙動が分かれ、研究はまだ完全に結論づけられていない点もあります。つまり「下り=必ず速い/必ず遅い」と一概には言えないが、クマが下りを苦手としているという証拠はない、というのが現状です。
種類ごとのスピード感(参考値)
- 北米のブラックベア:最高で約 30 mph(約48.3 km/h) 前後。
— 30(miles/h)× 1.609344 = 48.28032 ≒ 48.3 km/h - ブラウン/グリズリーベア:最高で約 35 mph(約56.3 km/h) 程度の報告あり。
— 35 × 1.609344 = 56.32704 ≒ 56.3 km/h。
(これらは短距離のスプリント値で、持続できる時間は限られますが、それでも人間が逃げ切れる速度ではありません。)
実用的な注意(遭遇時に「下りを使って逃げる」はダメ)
- まとめると、**「下り坂に逃げればクマが転ぶ/遅れる」**という昔のアドバイスは誤りです。下りでもクマは十分速く走れるため、坂を使って逃げ切ろうとするのは危険です。代わりに落ち着いて状況に応じた対処(声を出して距離を取る、ゆっくり後退する、車や建物が近ければそこへ移動する等)を取るべきです。
- 加えて、地面の条件(雪や氷、緩い砂礫、倒木の多い急斜面)によってはクマも走りにくくなることはあるので、そうした条件下では速度が落ちる場合もあります。ただし「人間が安全に逃げられるほど落ちる」保証はありません。
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