結論(先に短く)
eSIMだから遅い/速いということは基本的にありません。
eSIM(=eUICC)と物理SIM(UICC)は「加入者情報を格納する媒体」の違いに過ぎず、実際のデータ送受信(ユーザープレーン)は端末のモデムと基地局・コア網が担います。速度差を感じるときは設定・端末挙動・キャリアのプロビジョニングなど周辺要因が原因のことがほとんどです。
技術的な理由(なぜ同じなのか)
- SIMの役割:SIM(UICC/eUICC)はIMSI・認証鍵(Ki)などを保持し、端末と網側で認証(AKA 等)を行うだけ。
- ユーザーデータの経路:通話やパケットはSIM経由で流れるのではなく、モデム(ベースバンド)→無線(RAN)→コア網(S-GW/P-GWやUPF等)を経由します。
- 標準規格:eUICC/UICCは3GPP・GSMA準拠で同じUSIM機能を提供するため、認証後は同じ無線機能(LTE/5G)を使います。
→ つまり「認証情報をどこに格納しているか」は、下り上りのスループットそのものに関与しません。
それでも差が出て見える典型的な理由
- キャリア側プロビジョニング差
- 同じ契約でも eSIM 用プロファイルに別のQoS(優先度)やオプション設定が付与されていることが稀にある。
- APN/接続設定の違い
- MVNOなどでAPNが自動設定されないと最適ルートに繋がらず実効速度が下がる。
- 5G/VoLTE等プロビジョニング未反映
- eSIM切替後にキャリア設定が更新されず、高速な接続が使えていない場合。
- デュアルSIM(eSIM+物理SIM)運用の制約
- 機種によっては同時待受時に5GやCAが制限され、データ速度が落ちる。
- 端末・アンテナ設計差
- eSIM専用モデルと物理SIM搭載モデルで内部レイアウトが違い、アンテナ性能差が出ることはある(ただし「SIM媒体」自体のせいではない)。
- プロファイル破損や残骸の干渉
- 複数プロファイルの競合で望ましいプロファイルが使われない場合がある。
実務的な検証方法(速さの差を確かめる手順)
確かめるにはA/Bテストを行うのが確実。
- 同じ場所・同じ時間に測る(電波条件の差を排除)。
- 条件A(eSIM):eSIMを有効にして他の回線は無効化 → Speedtestなどで複数回測定。
- 条件B(物理SIM):同一端末で物理SIMを有効(または同じ型番の別端末に物理SIM)→同様に測定。
- 結果を平均比較。大きな差が出れば、設定・プロビジョニングの問題の可能性大。
(※同一端末で切り替えられない場合は、同一機種・同一OSバージョンの別端末で比較)
速度が遅く感じたときのチェックリスト(優先度順)
- 再起動・機内モードON→OFF(無線の再初期化)
- 「モバイルデータに使う回線」が正しく指定されているか確認(デュアルSIM機)
- APN(アクセスポイント名)をキャリア公式値で確認/手動設定
- キャリア設定アップデート/OSの最新版を適用
- 5G・VoLTE・ローミング設定が必要に応じてONか確認
- 不要なeSIMプロファイルを削除(競合回避)
- ネットワーク設定のリセット(最終手段)
- 同一条件でABテストを行い、違いがあるならキャリアにプロビジョニング確認を依頼
まとめ
- 技術的事実:eSIM と 物理SIM は「速度差を生む要素」ではない。
- 現実的に差が出る原因は、設定・端末モード・キャリア側のプロビジョニングや運用ポリシー、あるいは端末設計差に起因する。
- 問題があるなら上のチェックリストで切り分け → 必要ならA/Bテスト結果を持ってキャリアにプロビジョニングの再確認を依頼してください。
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