クマは想像より非常に速い。 種や個体差・状況にもよるが、短距離の最高速度はおおむね時速40〜60 km 程度に達すると言われることが多く、人間が逃げ切れる速度ではありません。したがって「クマが来たら全力で逃げる」は危険です
1) 速度の目安(種ごとの典型値)
- ツキノワグマ(アジアブラックベア):自治体・研究資料では「短時間で時速40〜50 km 程度」との表現がよく使われます(短いダッシュで相当速い)。(東京都環境局, 宮城県公式サイト)
- ヒグマ(ブラウン/グリズリー型):北米の公的記録では「時速30マイル(約48 km/h)前後〜35〜40マイル(約56〜64 km/h)」と報告される例があり、種や測定状況で幅があります。つまり**30〜40 mph(約48〜64 km/h)**という幅が出てきます。
2) 「速い」けれど持久力はそれほどではない — しかしそれが意味すること
- クマは短距離の加速力・最高速度が非常に高い一方で、マラソンのように長時間ずっとトップスピードを維持するわけではありません(短い“ダッシュ”で追いつくのが主)。ただし、その短いダッシュで人間は簡単に追いつかれます。
3) 人間はクマに「絶対に」勝てないのか?
- 一般の人(普通の走力)ではまず勝てません。速いスプリンター(世界トップ級)でもクマの最高速度に匹敵するか劣ることが多く、しかもクマは斜面・起伏・荒地での機動性が高く、短距離での加速も優れています。自治体や環境省のガイドも「人間の運動能力では逃げ切れない」と明記しています。
4) 地形・状況で変わる — 「山の中=人が逃げにくい」
- 森林の藪・急斜面・ぬかるみでは人の走行はさらに制限される一方、クマは狭い場所や悪路を器用に動きます(樹上移動が得意なツキノワグマもいる)。そのため「見た目よりも早く捕まる」リスクが高まります。
5) 「走ると追ってくる」 — なぜ走ってはいけないのか
- クマは動くものを追う習性や、驚いたときに防御的に反応する性質があります。急に走ると“追跡”行動や興奮を引き起こし、かえって危険が高まるため、多くの公的ガイドラインは「走って逃げるな」と明確に警告しています。静かに(背を向けず)後退する、声を出して存在を知らせる、グループで固まるなどが推奨されます。
6) もしクマに向かって突進(チャージ)されたら?
- まず:走らない(繰り返し)。チャージは威嚇の「ブラフチャージ」であることも多く、慌てて走ると追いかけられやすい。落ち着いて距離を取る、両腕を上げて大きく見せる、低い声で話すなどが基本です。(アメリカ合衆国国立公園局, 環境省)
- 攻撃が実際に始まった場合の応答(種による違い):
- ヒグマ / ブラウンベア型(防御的攻撃が多い):多くの専門家は「防御的(驚かせた・子を守る)攻撃の場合は“身を伏せて死んだふり(play dead)”が推奨されるケースがある」一方で、攻撃が“捕食的”に変わった場合は反撃するべきとされる。
- ツキノワグマ / ブラックベア型:こちらは防御的攻撃以外に“捕食的な攻撃”が起きることもあり、逃げ場がないときは立ち向かって反撃(顔面を狙う等)することを推奨する資料もある。どちらのケースでもベアスプレーが最も有効な携行品とされます。
7) 実務的アドバイス(現場でやること)
- 走って逃げない。 静かに、クマを見ながらゆっくり後退する。背を向けて走るのはNG。(環境省)
- グループで固まる・大声でない声で存在を伝える。 鈴や音で事前に人の存在を知らせるのも有効。
- ベアスプレーを携行し、扱いに慣れておく。 研究とガイドラインはベアスプレーが高い確率で熊の攻撃行動を止めると示している。
- 木に登るのは信頼できる選択肢ではない。 ツキノワグマは木登りが得意、ヒグマの若い個体も登れる例があり、有効とは限らない
- 遭遇前の予防が最も重要。 食べ物管理、ゴミの管理、出没情報の確認、人の存在を知らせる行動(鈴・会話)を常に行う。
最後に(まとめ)
- クマは短距離で非常に速く走り、地形や状況では人よりはるかに有利です。だから**「走って逃げる」ことは現実的な逃走方法ではなく危険**です。代わりに「走らない」「落ち着いて後退」「ベアスプレー」「事前の予防」を基本にしてください。
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