カチカチに固まった書道・図工の筆は、たいていあきらめずに根気よく洗えばかなり戻せます。以下、家庭で安全に行える材料・手順(基本→強化→仕上げ)、注意点、よくあるトラブルと対処法をわかりやすくまとめます。
準備するもの
- ぬるま湯(約30〜40℃。熱すぎない)
- 中性の台所用洗剤、または無香料のシャンプー(子供用ベビーシャンプー推奨)
- ヘアコンディショナー(市販のもので可)または液体の柔軟剤(少量)※使いすぎ注意
- 小さな洗面器またはコップ
- やわらかい指、または柔らかい歯ブラシ(子供が使う場合は大人が行う)/目の粗いコーム(獣毛筆の毛を傷めないタイプ)
- キッチンペーパー、古いタオル、乾かす場所(吊るせるフックなど)
- (あると良い)プラスチック製の筆ホルダーや輪ゴム(形を保つため)
基本手順(まずはこれを試す)
所要時間の目安:30分〜2時間(繰り返すと効果が上がる)
- 筆の芯(毛の根元)部分の“余分な固まり”を軽くほぐす
- 指先で筆の毛束を押さえ、固まった墨の塊をやさしくつまむようにして崩す。無理に引っ張ると毛が抜けるので注意。
- ぬるま湯で予備的に浸す(10〜20分)
- 洗面器にぬるま湯を入れ、筆の穂(毛先側)だけが浸かるようにして10〜20分置く。毛の付け根まで長時間浸けっぱなしにする必要はない(接着剤が使われている場合、熱や長時間の浸漬で緩む恐れがあるため)。
- 中性洗剤(またはベビーシャンプー)でやさしく洗う
- 指で毛先から根元に向けて、泡でやさしく揉む(毛を逆方向に強く擦らない)。墨の色が水に出なくなるまで繰り返す。
- すすぎ
- ぬるま湯で十分にすすぐ。水が透明に近くなるまで。
- コンディショナーで毛を柔らかくする(オプション)
- 小さな容器にぬるま湯を入れ、コンディショナーを数滴(少量)加える。そこに筆を1〜5分浸し、指でやさしく揉む。コンディショナーは毛の油分を補って柔らかくする効果がある。
- 最終すすぎ&水切り
- コンディショナーをしっかりすすぐ(残ると毛がべたつく)。軽く毛の方向に沿って水を絞る(押し出すように)。
- 形を整えて乾かす
- ティッシュで毛先を軽く押さえ形を整える。筆は穂先が下向きか真横にして自然に乾かす(穂先を上にすると水が根元に溜まり接着を傷める可能性あり)。吊るせる場合は穂先下向きがベター。形を崩さないよう輪ゴムで紙などに軽く固定してもよい。
頑固に固まった場合の「強化」手順
(基本で十分戻らないとき。※必ず大人が行う)
A. 温め+繰り返し浸す
- ぬるま湯を都度交換して、15〜30分ずつ複数回浸す(墨の溶解は時間勝負)。毎回指でやさしく揉む。
B. 酵素系洗剤(衣類用の生物学的洗剤を薄める)
- 酵素系洗剤を非常に薄く(説明書よりずっと薄め)したぬるま湯に短時間浸し、やさしく揉む。たんぱく系の汚れや接着の一部に効くことがある。ただし説明書に従い、目立たない箇所で試す。後で十分にすすぐこと。
C. 目の粗いコームや柔らかい歯ブラシで“ほぐす”
- 毛を傷めないよう極めてやさしく、毛の流れに沿って梳かす。強く引くと抜けるので注意。
注意:揮発性溶剤(アルコール、シンナー、除光液など)は接着剤や毛を痛める危険があるため基本的に使わないでください。
仕上げケア(柔らかさと形の回復を助ける)
- コンディショナー後に、さらに少量のオリーブオイル(ごく少量)を毛先に馴染ませると艶と柔らかさが戻る場合があります。ただし量が多いとベタつくのでごく微量に。子どもが使う筆はオイルを避けた方が扱いやすい。
- 最後は筆の穂を軽く整え、輪ゴムで穂の少し下をゆるく縛っておくと乾燥後に穂先がまとまりやすい(縛りすぎ禁止)。
乾かし方のコツ(長持ちさせるために重要)
- 完全に乾かすこと(内部が湿ったままだとカビや接着剥がれに)
- 直射日光や強い熱は避ける(毛が硬くなる・接着剤が劣化する)
- 吊るすときは毛先が下か水平が基本。筆先を上にするのは避ける。
- 乾燥後、形が乱れていれば軽く水で湿らせて形を整え直す(少量でOK)。
予防ポイント(再発防止)
- 授業後はなるべくその日のうちに水で洗う(墨が乾く前が最も安全)
- 洗うときは毛の根元から先へではなく、根元→先へ(根元の墨を押し出すイメージ)
- 乾かすときは形を整えて保管(筆置きや吊り下げ)
- 子どもが自宅で洗う場合は「やり方メモ」を渡すと家庭で正しく扱える
よくある質問と対処
Q. 「完全に元どおりになりますか?」
A. 多くはかなり回復しますが、長期間放置して毛が割れてしまった場合は完全復活は難しいです。短期間で処置するほど回復率は高いです。
Q. 「接着剤の部分(軸と毛の付け根)がぐらつく/毛が抜ける」
A. 接着部に水が入りすぎると接着剤が緩むことがあります。接着が明らかに剥がれている場合は修理や買い替えを検討してください。
Q. 「子どもが自分で洗っても大丈夫?」
A. 基本は大丈夫ですが、ぬるま湯の熱さ・すすぎ不足・濡れた床で滑る危険などに注意し、大人が一度手順を見せてから任せるのが安心です。


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