学校の書道の授業では「筆を学校で洗ってから帰るべきか」「洗わずに持ち帰るべきか」は、教育委員会・学校側の方針や安全面の配慮、設備の事情によって異なります。ここでは、両方の立場がなぜ存在するのか、その理由・メリット・デメリットを整理して詳しく説明します。
■ 1. なぜ本来は “学校で洗って帰る” のが望ましいのか
●(1)筆はすぐ洗わないと傷む
- 書道の墨は油分が少なく乾くと固まるため、
乾いた墨が毛にこびりつく → 毛が割れる → 筆が使えなくなる
という劣化が起こる。 - 洗い残しが続くと筆がダメになり、買い替えの経済的負担も発生。
つまり本来は、授業後すぐに水洗いするのが筆を長持ちさせる基本です。
■ 2. しかし “学校の方針で洗わずに持ち帰らせる” 場合がある理由
学校によっては、次のような事情から
「洗わずに新聞紙で包んで持ち帰る」
というルールにしているところもあります。
◆ 理由①:水道設備・人数の問題(混雑・時間不足)
- 1クラス30~40人が同時に筆を洗うと、水道が長蛇の列になる。
- 授業時間(45~50分)内に片付けきれず、次の授業が遅れる。
- 墨汁で流し台や床が汚れ、清掃の負担が大きい。
→ 時間管理と教室環境維持のために家庭で洗うよう依頼する学校がある。
◆ 理由②:学校の水道や排水への配慮(環境面)
- 墨は炭素が主成分で、水に流しても問題は少ないが、
大量の墨を一度に洗い流すと排水が真っ黒になる。 - 排水管が詰まることを嫌がる学校もある。
→ 設備への負担を抑えるため、校内では“軽くしごくだけ”にする方針もある。
◆ 理由③:安全面(混雑による事故防止)
- 子どもが一斉に水道に集まると、
押し合い・転倒・濡れた床での滑倒事故
が起こりやすい。 - 墨のついた手で移動するため、廊下に転倒リスクが増える。
→ 安全優先で「家庭で落ち着いて洗う」ことを勧める学校もある。
◆ 理由④:次の授業の準備のため
- 書道の次に別の教科(算数・理科など)があると、
机や手が汚れたままでは授業が始められない。 - 学校で洗わせると時間がかかり、授業の切り替えが難しい。
→ 片付け簡略化のため、持ち帰り洗いの方針が採用されることがある。
■ 3. 学校で洗わせる場合/家庭で洗わせる場合の違い
【A】学校で洗わせる方針のメリット
- 筆の品質が守られる(すぐに洗える)
- 家庭への負担が少ない
- 洗い方の指導ができ、正しい筆の扱いを学べる
【A】デメリット
- 時間がかかり、授業進行を圧迫
- 水回りに墨汚れが広がる
- 事故リスク・混雑の問題
【B】家庭に持ち帰らせる方針のメリット
- 授業時間を確保できる
- 教室や水回りの汚れ・清掃負担を軽減できる
- 子どもが落ち着いて洗える
【B】デメリット
- 家庭の手間が増える
- すぐ洗えない場合、筆が固まって傷むリスク
- 家庭ごとに洗い方の差が出る(筆が早くダメになる家も)
■ 4. 保護者として取ると良い対応
学校側の方針がどうであれ、以下の点を押さえておくと安心です。
●(1)持ち帰ったらできるだけ早く洗う
当日中に、水だけでしっかり洗うだけで状態が全然違います。
●(2)筆の根元(穂首)を念入りに洗う
ここに墨が残ると割れて寿命が短くなります。
●(3)洗い方を子どもに少し教える
- 穂先を軽く手のひらで揉む
- 根元の墨を押し出すように洗う
- 形を整えて乾かす(逆さ吊りや新聞紙)
※完璧でなくても、子どもが自分でできる範囲で十分。
●(4)どうしても不満がある場合は学校に相談してもOK
- 「最低限ここまでは学校で軽くしごいてほしい」
- 「直前の時間が短くて子どもが焦る」
といった要望は、トラブルになりにくい形で相談すれば改善されることもあります。
■ 5. まとめ
- 筆は本来、授業後すぐ洗うのが望ましい。
- しかし学校によっては、時間・安全・設備・清掃負担の都合で“洗わずに持ち帰る”方針を採用している。
- 家庭での洗い方を少し工夫すれば筆は長持ちする。
- 方針が合わないと感じた場合は、担任や学校に柔らかく相談するのが良い。


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