家(自宅)にテレビや「NHKを受信できる機器」がなければ原則としてNHK受信料を支払う義務はありません。
ただし「受信できる環境がある」「NHKの放送を実際に受信(視聴)している」「過去に設置していたことをNHKが立証できる」などの事情があると支払い義務や遡及請求が問題になります。以下、法律・判例・現実運用・注意点・実務的対処をわかりやすく整理します。
1) 法的な考え方(要点)
- 放送法は「放送を受信できる設備を設け置いた者はNHKと受信契約を結ぶ義務がある」と定めています。つまり 「受信できる機器があるかどうか」 が基本的基準です。NHK側も公式に「受信できる設備をお持ちの方は受信契約を結ぶことが定められている」と説明しています
- ただし「設置(set)とは何か」「携帯機器(スマホ等)をどう扱うか」などの解釈は争点になっており、裁判での判断も蓋然性を持ちます。最高裁等の判決は、NHKが設置や受信の事実を立証できれば、受信契約成立・受信料支払い義務が認められる可能性があることを示しています
2) 「テレビがない」=支払義務なし、は原則正しいが条件付き
- テレビ(やNHKが受信できる機器)が「本当に存在しない」場合、原則として受信料は発生しません(機器が無く、視聴していないため)。
- しかし、次の点に注意が必要です:
- スマホ・パソコン・タブレットでNHKの配信(見逃し配信・NHKオンデマンド等)を視聴している場合は、受信契約義務が生じる可能性があります(NHK側の案内や実務の解釈による)
- ケーブルテレビや集合住宅などで世帯に「受信環境」がある場合、団体契約の有無や配信契約の仕組みによって契約義務が生じ得ます。
- 過去にテレビを設置していたが廃棄した場合、NHKは「いつ設置していたか」を立証できればその時点まで遡って請求するケースがあり、裁判で争われた例もあります。
3) 判例・実務で注意するポイント
- 最高裁判決や下級審の判断の趣旨:NHKが「受信設備の設置時期・受信可能性」を立証できれば、契約義務や遡及請求が認められる場合がある。つまり 「テレビがない」と言い張るだけでは争いになり得る。
- 一方で、法解釈上の争点(「設置」の意味、携帯受信機器の扱い等)は残っており、必ずNHKの主張が認められるわけではありません。裁判例ごとに事情が異なります。
4) スマホ・PC・カーナビはどう扱われるか
- 近年、スマホ・PCでのインターネット配信やNHKの公式配信視聴が増えたため、「テレビ以外の受信手段」が受信契約の判断材料になります。NHK側は配信を開始した場合も契約対象であるとする立場です(実務的解釈)。一方で法的には細かい線引きが争点です。スマホでNHK公式配信を視聴する習慣があるなら、契約義務発生のリスクは高まります。
5) 実務的な「もしテレビが無い」場合の対応(証拠保全が重要)
NHKから連絡・訪問・請求が来たときに「テレビが無い」として争う/対応する場合、以下を準備すると実務的に有利です。
- 廃棄・処分の証拠:テレビを処分しているなら、リサイクル券、廃棄伝票、購入/廃棄の領収書などの写しを用意。
- 現在の家電の写真:居室やリビングの写真(テレビが写っていないことが分かるもの)を残す。
- ケーブルやアンテナの状況確認:集合住宅の共用配線か個別か、ケーブル契約の有無を確認。
- NHKとのやり取りの記録を保存:訪問時の名刺、メール、電話の記録、受領書など。
- 必要なら弁護士や消費生活センターに相談:書面でのやり取りや法的対応が必要な場合に備える。
6) よくある誤解(Q&A形式)
Q. 「テレビがないから絶対に支払わなくていい?」
A. 原則は「機器が無ければ支払義務なし」です。ただしスマホ・PCでNHKの配信を見ている、あるいはNHKが設置の事実を立証できる場合は支払い義務や遡及請求が生じ得ます
Q. 「NHKが勝手に家の中を調べることはある?」
A. NHKは外観確認や訪問で受信機の有無を確認しますが、居住者の同意なく家に勝手に入る権限はありません。立ち入りは本人の同意が必要です
Q. 「スマホでNHKを見たらどうなる?」
A. 視聴開始が認められれば契約義務が生じるリスクがあります。NHKは配信視聴を契約対象とする実務的立場を示しています。
7) 実務的なおすすめアクション(チェックリスト)
- (まだテレビがある)→ すぐにどうするか:契約して払うか、処分して証拠を残す。
- (テレビを既に処分済み)→ リサイクル券等の証拠を整理しておく。NHKから連絡が来たら証拠を提示する。
- (スマホ等でNHKを視聴している)→ 視聴を止めるか、契約の必要性をNHKに確認する。
- (NHKから裁判等の書類が来た)→ 放置せず、期限内に対応。必要なら弁護士に相談。
- 不安ならNHKの公式窓口に状況を説明して書面で確認しておく(やり取りの記録を残すと安全)。
8) まとめ(最重要ポイント)
- テレビや受信可能な機器が無ければ、原則支払義務はない。
- ただしスマホやPCの配信視聴や、NHKが設置の事実を立証できる場合は支払義務や遡及請求が生じ得る(最高裁等の判例も参考)
- 実務では証拠保全が重要:廃棄証明や写真、やり取りの記録を残しておくと安心です。


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