ひき逃げをしてしまう人の心理には、いくつかの複雑な要因が絡み合っています。これは決して正当化できる行動ではありませんが、なぜ人がそのような選択をしてしまうのかを理解することは、再発防止や対策にも役立ちます。以下に、心理面・状況面の観点から詳しく解説します。
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1. パニック状態による判断力の低下
事故を起こした直後、人はしばしば強い恐怖や混乱に襲われます。特に、被害者が倒れて動かない、血を流しているなどの衝撃的な場面に直面すると、脳がパニックに陥り、「冷静な判断」ができなくなります。
この状態では、理性的な「助けなければ」という意識よりも、「この場から逃げたい」「現実を直視したくない」といった衝動的な行動に走ることがあります。
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2. 自己保身・責任逃れの心理
ひき逃げは、加害者の中に次のような「自己保身」の心理が強く働いたときに起こりやすいです:
「このまま逃げればバレないかもしれない」
「捕まったら仕事や家庭が終わる」
「飲酒や無免許がバレたら重罪になる」
このような思考が一瞬で頭をよぎり、自分を守るためにその場を離れてしまうという選択に至ることがあります。
とくに、飲酒運転中・無免許・スピード違反中など、違法な状況下で事故を起こした場合は、「事故を起こした責任」よりも「違反がバレるリスク」を強く意識してしまい、逃げてしまうことがあります。
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3. 現実逃避と罪悪感の否認
事故を起こした直後、特に被害者の様子が分からない場合には、「自分のせいじゃない」「軽く当たっただけ」と事実を過小評価しようとする心理が働きます。
これは、心の中で「自分が人を傷つけた」という事実を受け入れるのが耐えられず、それを否定することで心の安定を保とうとする自己防衛的なメカニズムです。この否認が、逃げるという行動につながることがあります。
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4. 過去の経験や価値観による影響
ひき逃げをする人の中には、以下のような価値観や過去の経験が影響しているケースもあります:
過去に同じようなトラブルから「逃げてうまくいった経験」がある
「警察は信用できない」「関わったら損をする」といった偏った思い込み
責任を取ることを極端に恐れる性格傾向(回避傾向・依存傾向)
こうした背景を持つ人は、「その場で通報して責任を果たす」という行動よりも、「まず逃げる」「見なかったことにする」という反応をしやすい傾向があります。
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5. その場での影響判断ができない未成熟さ
とくに若年層など、まだ社会経験や倫理観が未成熟な場合、「逃げたらどうなるか」という未来の影響を正しく判断できないことがあります。
「とりあえず今を乗り切る」「その場しのぎでいい」と考えて行動してしまうのです。
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6. 心理的なテンパりにより“逃げる”が反射的な行動になるケース
一部のひき逃げ事件では、加害者が「ぶつかったとは思わなかった」「音だけで何が起こったか分からなかった」と主張するケースもあります。
このような場合、実際には事故と認識していなかった、または半信半疑のまま逃げてしまった、という認知のズレがあった可能性があります。
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まとめ
ひき逃げをしてしまう心理には、
パニックによる混乱
自己保身と責任逃れ
現実逃避と罪悪感の否認
歪んだ価値観や未成熟な判断力
といった、さまざまな心理的・状況的要因が重なって発生することが多いです。
どの理由であれ、「事故を起こしたらすぐに救護と通報をする」というのは、人命を守るうえで基本的かつ絶対の責務であり、それを怠ったひき逃げは社会的にも非常に重い罪となります。
再発を防ぐためには、法的な厳罰だけでなく、こうした心理の背景に目を向け、教育や啓発、予防策を整えることも重要です。
なぜ人はひき逃げをしてしまうのの?

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