江戸川は、利根川から分かれて千葉県・埼玉県・東京都の境界付近を南へ流れ、東京湾へ注ぐ、首都圏を代表する大河川です。
単なる「東京と千葉の境を流れる川」ではありません。首都圏の水道水を支える水源であり、大雨のときに大量の水を海へ流す重要な治水施設でもあり、河川敷は公園・スポーツ・サイクリング・自然観察などに利用されています。国土交通省によれば、江戸川は茨城県五霞町・千葉県野田市の関宿付近で利根川から分かれ、東京湾まで約55~60km流れています。
一方で、防災面ではかなり重要です。江戸川の堤防が大規模洪水で決壊した場合、非常に広い範囲が浸水する可能性があります。 国土交通省は想定最大規模の洪水浸水想定区域だけでなく、浸水継続時間、家屋倒壊等氾濫想定区域まで公表しています。
江戸川とはどんな川?千葉・埼玉・東京を流れる大河川
江戸川の最大の特徴は、利根川から分かれている川であることです。
茨城県五霞町・千葉県野田市の関宿付近で利根川から分派し、
利根川
↓
江戸川
↓
埼玉・千葉県境付近
↓
東京都・千葉県境付近
↓
東京湾
という流れになっています。
国土交通省は江戸川を、流路延長約55~60km、流域面積約200km²の一級河川としています。
現在の江戸川が形成されたのは江戸時代初期の「利根川東遷事業」と深く関係しています。
つまり江戸川は、自然にできた川というだけではなく、江戸時代からの大規模な治水・水運政策によって現在の姿が形作られた川でもあります。
江戸川はなぜ重要?首都圏の水源・治水を担う川
江戸川は非常に重要な役割を持っています。
主な役割は、
- 水道水の水源
- 農業用水
- 工業用水
- 洪水を海へ流す
- 河川環境の維持
- レクリエーション
- 自然観察
- サイクリング
- 歴史・観光
などです。
特に重要なのが水道水です。
江戸川は東京都、千葉県、埼玉県などの上水道を支える水源の一つとなっています。
したがって、
江戸川=単なる県境の川
ではなく、
首都圏の生活そのものを支えている川
と考えると分かりやすいでしょう。
江戸川の水源はどこ?実質的には利根川
江戸川について「水源はどこ?」と考えた場合、非常に重要なのが利根川です。
江戸川は源流から一本の川として流れてくるのではなく、利根川から分かれた派川です。
つまり、
利根川
↓
関宿付近で分派
↓
江戸川
↓
東京湾
という関係です。
そのため江戸川の水量は、利根川水系全体の流況や降雨の影響を受けます。
さらに江戸川には、
- 利根運河
- 坂川
- 真間川
- 今上落
- 座生川
などの支川・水路も関係しています。
大雨が降ったら江戸川の堤防は決壊する?
可能性はあります。
もちろん、
「大雨が降ったら必ず堤防が決壊する」
という意味ではありません。
江戸川には、
- 堤防
- 水門
- 排水施設
- 高規格堤防
- 河道整備
- 洪水調節施設
などの治水対策が整備されています。
しかし、河川堤防は「どんな洪水でも絶対に安全」というものではありません。
国土交通省は江戸川について、計画規模を上回る洪水によって堤防が破堤した場合の氾濫を想定した資料を公開しています。
つまり、
「堤防があるから江戸川周辺は浸水しない」
という考え方は適切ではありません。
江戸川で堤防決壊が起こると被害が大きくなり得る理由
江戸川の下流部には、非常に人口の多い都市部があります。
特に、
- 松戸市
- 流山市
- 市川市
- 江戸川区
- 葛飾区
- 足立区周辺
などには住宅地・商業地・交通網が広がっています。
そして江戸川周辺には低地が広がっている場所があります。
国土交通省も、江戸川沿川では特に下流部で人口・資産が高度に集中しており、堤防が破堤した場合には広範囲の浸水が想定されると説明しています。
江戸川が氾濫するとどこまで浸水する?
これは非常に重要なポイントです。
国土交通省の「江戸川洪水浸水想定区域図」では、想定最大規模の洪水について、
- 0.5m未満
- 0.5~3m未満
- 3~5m未満
- 5~10m未満
- 10~20m未満
という浸水深の区分が設定されています。
つまり地域によっては、
床上浸水程度では済まない深さ
が想定されている場所があります。
国土交通省も、
- 0.5m:1階床上浸水
- 3m:2階床面が浸水する可能性
- 5m:2階が水没する可能性
という目安を示しています。
したがって、江戸川沿いの住宅では**「浸水するかどうか」だけでなく「何m浸水する可能性があるか」**を見ることが重要です。
江戸川周辺では長期間の浸水も考えられる
さらに注意したいのが浸水継続時間です。
洪水が発生すると、
「水が来る→すぐ引く」
とは限りません。
低地では排水に時間がかかり、長時間にわたって浸水する可能性があります。
そのため国土交通省は江戸川について、浸水継続時間の想定図も公開しています。
住宅を考える場合には、
最大浸水深+浸水継続時間
の両方を見ることが重要です。
堤防決壊だけではなく「越水」も考える
洪水では、
堤防が壊れる=洪水
だけではありません。
水位が堤防の高さを超えて水が流れ出す越水もあります。
さらに、
- 堤防の浸透
- 堤防の侵食
- 河岸侵食
- 水門・排水施設への負荷
など、複数の要因があります。
そのため、江戸川沿いでは大雨の際に水位情報を確認することが重要です。
ハザードマップではどんな災害が想定されている?
江戸川について国土交通省が公表している洪水関係の資料はかなり詳細です。
主に、
① 想定最大規模
想定し得る最大規模の降雨によって江戸川が氾濫した場合の浸水区域です。
② 計画規模
河川整備の基本となる規模の降雨による洪水を想定しています。
③ 浸水継続時間
洪水後に一定の浸水がどれくらい続くかを示します。
④ 家屋倒壊等氾濫想定区域・氾濫流
強い氾濫流によって家屋が倒壊・流失する可能性がある区域です。
⑤ 家屋倒壊等氾濫想定区域・河岸侵食
河岸が削られることによって家屋の倒壊・流失につながる可能性がある区域です。
これらが江戸川について公表されています。
江戸川のハザードマップを見るときの注意点
ここはかなり重要です。
江戸川の洪水浸水想定区域図は、江戸川そのものの氾濫を中心にした資料です。
したがって、
「この図で浸水しないから、その地域は絶対安全」
とは言えません。
例えば、
- 中小河川の氾濫
- 内水氾濫
- 下水道の排水能力超過
- 支川の氾濫
- 想定以上の降雨
などが別に発生する可能性があります。
国土交通省も洪水浸水想定区域図について、想定を超える降雨や支川・内水などによって、区域外でも浸水が発生する可能性があると注意しています。
江戸川周辺は内水氾濫にも注意
江戸川そのものが氾濫しなくても、大雨によって道路や住宅地が浸水することがあります。
これが内水氾濫です。
特に都市部では、
猛烈な雨
↓
道路・側溝・下水道に大量の雨水
↓
排水能力を超える
↓
道路や住宅地に水がたまる
という現象が起こり得ます。
江戸川河川事務所も、江戸川周辺の水害を考える際には江戸川だけでなく、中川・綾瀬川などの河川や内水氾濫も含めたリスク情報を整備しています。
江戸川周辺で特に注意したい地形
一般論としては、
- 江戸川沿いの低地
- 河川敷に近い場所
- 旧河道
- 水田・湿地だった場所
- 排水路周辺
- 海抜の低い地域
などは水害リスクを詳しく確認した方がよいでしょう。
ただし、
「江戸川から○km以内は危険」
という単純な線引きはできません。
同じ市内でも地形・標高・堤防の位置によって大きく違います。
江戸川にはどんな生物がいる?
江戸川は都市部を流れる川ですが、意外に生物が豊富です。
松戸市が公表している江戸川・坂川の生き物マップでは、魚類として、
- コイ
- フナ
- ニゴイ
- ソウギョ
- ハクレン
- アユ
- ウグイ
- モツゴ
- ドジョウ
- ナマズ
- ライギョ
- メダカ
- ウナギ
- ブラックバス
- ボラ
- ハゼ
などが確認されています。
江戸川ではアユも確認される
江戸川というと「都市河川」というイメージがありますが、アユも確認されています。
また、海に近い下流部では、
- ボラ
- ハゼ
- スズキ類
など、汽水域・海域と関係する生物も見られます。
これは江戸川が東京湾とつながっているためです。
野鳥もかなり多い
江戸川河川敷では、
- カワウ
- ゴイサギ
- カルガモ
- カイツブリ
- カワセミ
- コサギ
- ダイサギ
- アオサギ
- ユリカモメ
- カモ類
- オオヨシキリ
- チョウゲンボウ
- ノスリ
などが確認されています。
松戸市も、江戸川河川敷には多くの野鳥などによる豊かな生態系が形成されているとして、自然環境の保全・活用を進めています。
江戸川の河川敷には植物も多い
代表的なのは、
- ヨシ
- ガマ
- マコモ
- エビモ
- セリ
- クレソン
- オモダカ
などです。
特にヨシ原などは、
- 魚の生息場所
- 鳥の休息場所
- 昆虫の生息場所
として重要です。
つまり江戸川は、
都市の中に残された大規模な水辺生態系
という側面も持っています。
江戸川は観光できる?
できます。しかもかなり観光資源が多い川です。
国土交通省も江戸川沿川について、
- 矢切の渡し
- 柴又帝釈天
- 野田の醤油
- 桜堤
- 河川敷
- スポーツ施設
- 花火大会
- サイクリング
- 自然観察
などを挙げています。
矢切の渡しは江戸川を代表する観光名所
江戸川観光で特に有名なのが矢切の渡しです。
東京都葛飾区柴又と千葉県松戸市側を結ぶ渡し舟で、江戸川の歴史・水運文化を感じられる場所です。
江戸川は江戸時代から舟運に利用されてきたため、こうした渡し場は川の歴史を知るうえでも重要です。
柴又・帝釈天も江戸川観光と相性が良い
江戸川を挟んだ東京側では、
- 柴又帝釈天
- 柴又の街並み
- 矢切の渡し
- 江戸川河川敷
を組み合わせた観光ができます。
特に映画「男はつらいよ」の舞台として知られる柴又は、江戸川観光と非常に相性の良いエリアです。
松戸側から江戸川を楽しむこともできる
千葉県松戸市側では、
- 江戸川河川敷
- 矢切の渡し
- サイクリング
- 野鳥観察
- 河川敷散策
- スポーツ
などを楽しめます。
松戸駅に近い河川敷では自然環境を生かした「ふれあい松戸川」などの取り組みも進められています。
江戸川サイクリングも人気
江戸川沿いには長大な河川敷・堤防上の道路などがあり、サイクリングとの相性が非常に良いです。
特に、
東京湾方面から千葉・埼玉方面へ長距離を走れる
のが魅力です。
ただし、河川敷の道路は、
- 大雨
- 増水
- 台風
- 工事
などによって通行できなくなることがあります。
河川敷は「普通の道路」と違い、増水時には安全性が大きく変化します。
江戸川河川敷は花火大会でも有名
江戸川周辺では、
- 江戸川区
- 市川市
- 松戸市
などで花火大会が開催されます。
特に江戸川区と市川市をまたぐ江戸川河川敷の花火は大規模なイベントとして知られています。
ただし、花火大会当日は非常に混雑するため、通常の河川敷散策とは別の注意が必要です。
江戸川の名物は何?
江戸川そのものの「名物」を考えるなら、川沿いの歴史・農業・水産・食文化まで含めて考えると分かりやすいです。
代表的なのは、
- 野田の醤油
- 小松菜
- 矢切のねぎ
- 川魚
- うなぎ
- そば
- 柴又の草だんご
などです。
野田の醤油は江戸川の歴史と深く関係する
江戸川上流部の野田市は、醤油の町として非常に有名です。
江戸川はかつて大量の物資を江戸へ運ぶ水運ルートとして利用されていました。
そのため、
野田の醤油
↓
江戸川を舟運
↓
江戸へ輸送
という物流が発達しました。
国土交通省も、江戸川沿川の歴史・文化を代表するものとして野田市の醤油工場を挙げています。
江戸川区の名物・特産品なら小松菜
東京側では、小松菜が代表的です。
江戸川区は小松菜の産地として知られ、
- 小松菜
- 小松菜を使った料理
- 小松菜スイーツ
- 小松菜加工品
などが地域の食文化になっています。
つまり「江戸川」という一つの川でも、
上流=野田の醤油
中流=流山・松戸・市川などの水郷・農産物
下流=東京・江戸川区の小松菜や柴又文化
というように、地域ごとに特色が変わります。
江戸川周辺では「うなぎ」も楽しめる
江戸川流域・東京東部では、昔から川や水辺と関係の深い食文化があります。
うなぎ、川魚料理などは江戸川周辺の食文化として楽しめます。
特に東京側では江戸前の食文化とも結びついています。
江戸川の水害リスクをまとめると
| 項目 | 江戸川 |
|---|---|
| 河川の種類 | 一級河川 |
| 水系 | 利根川水系 |
| 水源 | 利根川から分派 |
| 流路 | 五霞・野田付近→東京湾 |
| 長さ | 約55~60km |
| 水道水源 | 重要 |
| 大雨による増水 | あり |
| 堤防決壊 | 可能性あり |
| 越水 | 可能性あり |
| 河川氾濫 | 想定あり |
| 浸水 | 広範囲で想定あり |
| 浸水深 | 地域により0.5m未満~10m以上の区分 |
| 浸水継続時間 | 想定図あり |
| 家屋倒壊・流失 | 想定区域あり |
| 河岸侵食 | 想定区域あり |
| 内水氾濫 | 別途考慮が必要 |
| 道路冠水 | 大雨時に可能性あり |
| 生物 | コイ、フナ、アユ、ハクレン、ウナギ、ハゼなど |
| 野鳥 | カワセミ、サギ、カモ、ノスリなど |
| 観光 | 可能 |
| 観光資源 | 矢切の渡し、柴又、河川敷、桜など |
| スポーツ | サイクリング、野球、サッカーなど |
| 名物 | 野田の醤油、小松菜、矢切のねぎ、草だんごなど |
江戸川は「危険な川」なのか?
結論としては、普段から危険な場所という意味ではありません。
堤防や水門などの治水施設が整備され、多くの人が河川敷を散歩したり、スポーツをしたり、サイクリングをしたりしています。
一方で、
大規模洪水時には非常に大きな水害リスクを持つ川
です。
国土交通省は江戸川について、想定最大規模の洪水浸水想定区域を公表しており、堤防決壊時には広範囲の浸水が想定されています。
さらに、国土交通省の洪水氾濫シミュレーションでは、堤防の決壊地点ごとに、浸水範囲・最大浸水深・氾濫水の到達時間・浸水継続時間を確認できるようになっています。
江戸川周辺に住むなら「川から何km」では判断しない
江戸川周辺で住宅を購入したり引っ越したりする場合は、
「江戸川から1kmだから安全」
というような判断は避けた方がよいでしょう。
確認すべきなのは、
- 江戸川の洪水浸水深
- 想定最大規模
- 浸水継続時間
- 家屋倒壊等氾濫想定区域
- 河岸侵食区域
- 支川の洪水
- 内水氾濫
- 液状化
- 避難所
- 避難経路
です。
特に江戸川下流部では、住宅そのものが浸水しなくても、周囲の道路が浸水して避難が難しくなる可能性があります。
まとめ
江戸川は、
「利根川から分かれて東京湾へ流れる、首都圏の水道・治水・自然・観光を支える重要河川」
です。
歴史的には江戸時代の舟運を支え、現在では水道水源として利用される一方、河川敷は自然観察、スポーツ、サイクリング、花火などのレジャー空間になっています。
生物も豊富で、コイ、フナ、アユ、ハクレン、ナマズ、ウナギ、ハゼ、カワセミ、サギ、カモ類などが確認されています。
観光では、矢切の渡し、柴又、江戸川河川敷、野田の醤油文化、桜並木、サイクリングなどが特に魅力です。
ただし防災面では、「江戸川は堤防があるから安全」と考えるのは危険です。想定最大規模の洪水では広範囲の浸水が想定され、場所によっては深い浸水や長期間の浸水、家屋倒壊・河岸侵食のリスクもあります。
特に江戸川沿いで暮らす場合は、江戸川の洪水だけでなく、中小河川・内水氾濫・液状化まで含めて、その住所のハザードマップを確認することが重要です。

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