「猟友会には若者はいないのか?」──これは、近年の野生動物被害やクマ出没問題と深く関わる重要なテーマです。
結論から言うと、
🧭 若者も少しずつ増え始めているが、全体としては圧倒的に高齢化しており、“若者がほとんどいない”のが現状です。
以下では、
猟友会の年齢構成、若者が少ない理由、近年の若手ハンターの動向、今後の課題と展望を詳しく解説します。
🧓 猟友会の年齢構成(現状)
● 全国的なデータ(環境省・大日本猟友会などの統計より)
- 日本の狩猟者(ハンター)全体の平均年齢:60歳前後
- 50歳以上が約8割を占める
- 反対に、30歳未満はわずか数%(約3〜5%)程度
つまり、若者はほとんどいないというのが現実です。
● 猟友会員の例(自治体別の統計)
| 地域 | 猟友会員の平均年齢 | 備考 |
|---|---|---|
| 秋田県 | 約63歳 | 若年層は1割未満 |
| 長野県 | 約60歳 | 70代会員が最多層 |
| 宮城県 | 約65歳 | 若手会員は数% |
| 北海道 | 約58歳 | 全国で比較的若いが高齢化傾向 |
💬 つまり「70歳近い人が現場でクマの駆除に出動している」ケースも珍しくありません。
🕰 若者が少ない理由(なぜ高齢化しているのか)
若者が猟友会に少ないのは、単なる趣味の問題ではなく、制度的・社会的な要因が複合しています。
① 銃の所持・狩猟免許の取得が難しい
- 銃を持つには厳しい法的審査・精神鑑定・警察面接などが必要。
- 銃だけでなく、罠猟や網猟でも講習や更新手続きが複雑。
- 費用も高い(免許・銃所持・講習などで初期費用10〜30万円以上)。
若者が「気軽に始めにくい」構造的ハードルがある。
② 経済的な負担が大きい
- 弾薬、罠、車、ガソリン、装備など自己負担が基本。
- 有害駆除の報酬は少なく、赤字になることが多い。
- サラリーマン世代にとっては「休日を潰してまで活動する余裕がない」。
③ 活動が危険で責任も重い
- クマやイノシシの駆除は命の危険を伴う。
- 銃の扱いや安全管理にも神経を使う。
- 若者が「興味はあるけど怖い・危ない」と感じて敬遠することが多い。
④ 活動のイメージが古い
- 猟友会が「年配の男性中心」「閉鎖的」「昔ながらの会合が多い」と見られがち。
- 若者が参加しにくい雰囲気になっている地域もある。
⑤ 社会的理解の不足
- 「動物を殺す仕事」という誤解を受けやすく、
若者が「周囲から理解されにくい」と感じる。 - 実際は「生態系管理」「地域保全」の活動でも、世間の認知が追いついていない。
🐾 若者ハンターは本当にいないのか?
完全に「いない」わけではありません。
実は近年、**20代〜30代の“新世代ハンター”**が少しずつ増えています。
🔸 増加の背景
- ジビエ(野生肉)ブーム
- アウトドア・自然保護への関心の高まり
- YouTube・SNSでの発信による人気化(例:「田舎ハンター」「狩猟女子」など)
- 各自治体が若手育成に補助金を出す動き
🔸 若手ハンターの特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年齢層 | 20代〜30代 |
| 職業 | 農業・林業・自営業・アウトドア系など |
| 活動目的 | 自給自足・環境保全・趣味・地域貢献 |
| 情報発信 | YouTube・Instagramで狩猟体験を共有 |
| 使用道具 | 銃よりも「罠猟(くくり罠・箱罠)」が多い |
🌱 若者を増やすための取り組み
国・自治体・猟友会は、若手参加を増やすために次のような施策を進めています。
① 「若手ハンター育成講座」
- 狩猟初心者向けの講習・体験イベントを開催。
- 狩猟免許取得費用の補助を出す自治体もあります(例:長野県・兵庫県・高知県など)。
② 「狩猟女子」や「移住ハンター」の支援
- 女性ハンターや、田舎移住者が狩猟を始めやすいように支援制度を整備。
- 罠の設置方法やジビエ加工の講習などをサポート。
③ 猟友会のデジタル化
- 出動要請や情報共有をアプリやLINEで行う地域も登場。
- 若者が参加しやすい仕組み作りが進んでいます。
⚠️ それでも課題は残る
| 課題 | 内容 |
|---|---|
| 人数の少なさ | 若手の増加率よりも高齢者の引退率の方が高い |
| 活動の危険性 | 若手育成には安全教育・保険制度が不可欠 |
| 地域格差 | 都市部では若手がいても、山間部ではほとんどいない |
| 組織文化 | 古い慣習や上下関係が壁になることも |
現場では「若手が1人入っても、地域の70代メンバーに囲まれる」といった状況も多いのが実情です。
🧭 今後の展望
- 国は「鳥獣被害防止特措法」などを通じて、若手ハンター育成と地域支援を強化中。
- 今後は「狩猟 × 地域づくり × 観光(ジビエ・体験)」の形で若者参入が期待されています。
- 猟友会も「閉鎖的組織」から「地域と若者が連携する活動団体」へ転換を進めています。
✅ まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 若者の割合 | 全体の3〜5%ほど(圧倒的に少ない) |
| 平均年齢 | 約60歳前後 |
| 若者が少ない理由 | 費用・危険・手続き・イメージ・理解不足 |
| 若者の新動向 | ジビエ・アウトドア・SNS発信などから関心増加 |
| 今後の課題 | 継承・安全教育・地域との連携・収入面 |
| 展望 | 「保護と共存」を担う新世代ハンターが台頭しつつある |


コメント