クマ(ツキノワグマ・ヒグマともに)はブドウが非常に好きです。果実の中でも特に嗜好性が高く、ブドウ畑への被害例は全国的に報告されています。以下で、科学的な理由・行動パターン・被害事例・対策・安全行動まで詳しく解説します。
🧠 クマがブドウを好む理由
① 甘味(糖分)が高い
- ブドウは果糖・ブドウ糖を多く含み、糖度が15〜20度に達する品種もあります。
- クマは冬眠前に脂肪を蓄えるため、高カロリーで甘い食べ物を好む傾向があります。
- 熟したブドウの香りは強く、**クマの鋭い嗅覚(人間の数百〜数千倍)**で遠くからも察知されます。
② 食べやすく安全
- 果実が房状に実るため、一度登れば多くの実を食べられる。
- 梨やリンゴよりも皮が薄く、咀嚼しやすい。
- 木が低めの棚仕立てだと、クマにとって非常に「効率的な餌場」となります。
③ 季節の一致
- ブドウの収穫期(8〜10月)は、クマの活動が最も活発になる時期と重なります。
→ 冬眠準備期(高カロリー食を求める時期)にぴったりの餌。
🐻 どんなクマがブドウを食べるのか
- ツキノワグマ(本州・四国など)
里山に近い地域のブドウ園に頻繁に出没。山形・福島・長野・岐阜・兵庫などで被害報告多数。 - ヒグマ(北海道)
野生ブドウ(ヤマブドウ)を自然界で食べており、果実を食べる習性が強い。人里のブドウ畑にも出ることがある。
🍇 食べ方・被害の特徴
| 被害の種類 | 内容・特徴 |
|---|---|
| 果実の食害 | ブドウの房を食べ尽くす。枝や棚を壊すことも。 |
| 棚や支柱の破壊 | クマが登ったりぶら下がったりして棚が倒れる。 |
| 繰り返し出没 | 一度餌を得ると学習し、夜間に何度も通うようになる。 |
| 足跡・糞 | ブドウの皮や種が混ざった糞が多く見られる。 |
特に、夜間に静かに侵入し、熟した房を選んで食べる傾向が報告されています。
一度味を覚えた個体は、翌年も同じ場所に現れるケースもあります。
📅 季節性
- 8〜10月:被害のピーク。
- 9月前後:熟度が高まり、クマの活動が最も活発になる時期(脂肪蓄積期)。
- 11月以降:クマは山へ戻り、冬眠の準備に入る。
⚠️ 被害対策
短期的(即効性のある対策)
- 電気柵の設置(最重要)
- 高さ120cm以上、5段式が理想。
- 毎日電圧を確認(5000V以上推奨)。
- 下草の接触による漏電に注意。
- 落果・収穫残りを片付ける
- 甘い匂いが残るだけで誘引される。
- 食べ残し・皮・ジュースの容器も厳禁。
- 夜間照明・音響装置
- 一時的な効果あり。ただし慣れが生じやすい。
- 人の見回り
- 人の気配・声を感じることで出没を抑止できる。
- 防獣ネット
- 房全体を覆うタイプも有効だが、柵と併用が理想。
長期的対策
- 集落・農家全体での広域電気柵。
- 自治体や猟友会との情報共有(目撃マップ作成など)。
- 誘引植物(ヤマブドウ、クリ、カキ)を畑周辺から除去して、人里に寄せない環境整備。
🧍♂️ 人が遭遇した場合の安全行動
- 見つけても近づかない(ブドウ棚の陰などに隠れていることがある)。
- 静かに距離を取り、背を向けずに退く。
- 大声やフラッシュで驚かせない。
- 糞・足跡を見つけたら自治体や猟友会へ通報。
📜 まとめ(要点)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 好むかどうか | 非常に好む(果実の中でもトップクラス) |
| 理由 | 甘く高カロリー・香りが強く嗅覚で察知しやすい |
| 時期 | 8〜10月(収穫期) |
| 主な被害 | 食害・棚破壊・繰り返し侵入 |
| 主な対策 | 電気柵・落果管理・人の見回り・匂い対策 |
| 注意点 | 一度味を覚えると毎年現れる傾向がある |



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