ドライアイスの「白い霧」を少しだけ屋外で一瞬吸い込む程度なら通常は大きな問題になりにくいですが、密閉・換気不良の場所で大量に発生した霧(=昇華したCO₂)が蓄積すると非常に危険です。白い霧自体は見た目ほど“毒性がある煙”ではありませんが、二つの重大な危険があるため注意が必要です。以下、理由と根拠、具体的なリスク・対策を詳しく説明します。
1) 「白い霧」は何か?
- ドライアイス(固体CO₂)を水に入れると、水蒸気を含んだ白い霧(微小な水滴)が出ます。見える部分は水蒸気/微粒子ですが、その霧の中には大量の二酸化炭素(CO₂)ガスが含まれています。外観=有毒化学物質の煙、ではありませんが、周囲の空気中のCO₂濃度を上げる元になります。
2) 吸っても「平気」か? — どんな条件で危険か
- 屋外・短時間の偶発的な吸入:通常は問題にならないことが多い(ただし個人差あり)。
- 換気の悪い狭い場所/大量に使った場合:昇華で発生したCO₂が空間に蓄積し、酸素が置換されて酸欠(窒息)や高濃度CO₂による中毒(高炭酸血症)を起こす。実際の健康被害(めまい・頭痛・吐き気・意識喪失、最悪し亡)の報告があります。屋内保管や密閉容器での事故が典型例
3) CO₂の濃度と身体への影響(目安)
- 大気(屋外)=約400 ppm(0.04%)。
- 5,000 ppm(0.5%):OSHAの職業暴露限界(8時間平均) — これを越えると長時間暴露で健康影響のリスクが高まる
- それ以上(1%〜数%):呼吸促進、頭痛、めまい、動悸などの症状が出やすくなる。
- 高濃度(例えば5%やそれ以上):短時間でも強い呼吸困難、意識障害、けいれん、致命的な窒息に至ることがある。NIOSHやOSHAの資料が詳細な症状を示しています。
4) 「白い霧」以外の危険 — 冷たさ(凍傷)
- ドライアイスや、非常に冷たい霧に顔や口、喉、目を近づけると凍傷(冷凍熱傷)を起こす可能性があります(粘膜は特に弱い)。直接顔を突っ込むような行為は危険です。
5) 特に注意すべき人・場所
- 心肺疾患・呼吸器疾患を持つ人、高齢者、乳幼児は少量でも影響を受けやすい。
- 車内、地下室、狭い控室、密閉された倉庫などは要注意(CO₂は空気より重く低い場所に溜まりやすい)。日本の労働安全報告でも類似の事故が複数報告されています。
6) 実務的な安全対策(イベント・家庭問わず)
- 換気を確保する:屋内で使うなら十分な換気を行う。窓・扉の開放や機械換気。狭い空間では使用しない
- 顔を近づけない:霧が出ている容器や水面に顔を近づけたり、直に吸い込んだりしない。特に子どもには禁止させる。
- CO₂モニターの設置:屋内でまとまった量を使う(舞台・イベント等)はCO₂センサーで濃度監視する。目安:屋内はできれば800ppm前後以下に、危険は5000ppmを超えると考える。
- 量を管理する:使用量を最小限にし、霧の発生を制御。大量使用は業者の指導を受ける。
- 密閉空間で保管しない:密閉容器やトランク内に入れておかない。昇華で圧力上昇・酸欠を招く。
- 個人防護:顔や手を近づけないこと。ドライアイスを取り扱うときは断熱手袋・ゴーグルを使用。
7) もし吸ってしまったら(応急措置)
- めまい・頭痛・吐き気・呼吸困難・意識低下があればすぐに新鮮な空気のある場所へ移動し、症状が続く・重い場合は救急に連絡(119等)する。意識不明なら救急対応を要請。
まとめ(実践的ワンポイント)
- 屋外での一瞬の“蒸気”吸入は一般的に大きな問題になりにくいが、**「密閉・大量・換気不良」**の組み合わせでは非常に危険。
- 舞台やイベントで使う場合は必ず換気計画とCO₂濃度監視、担当者の配置、観客への距離確保を行ってください。


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